自由への指針⑤~ポイント交換~
【魔力回復薬(小)を1個購入しますか? 使用P:200 《購入》 】
体力を回復する薬は夏さんから貰っていたので、持っていない魔力回復薬を購入してみることにした。
品目を触ると購入確認画面が出たので、その《購入》という欄を選択する。
【ミッション達成】
初めてアイテムを購入しました
アイテムボックスを使用できるようになります
「アイテムボックス?」
購入した瞬間にミッションを達成したという通知と、将棋のマス目のようなものが表示された画面が出てきた。
マス目の一番左上に【魔力回復薬(小)×1】と書かれた瓶のようなものが映っており、この画面の枠上にはアイテムボックスと分かりやすく明記されている。
「これが……アイテムボックスなのか……どうやってこれを取り出すんだ?」
アイテムボックスはマス目だけしかなく、表示されているものを取り出す方法がわからない。
じっと見つめていてもダメなので、画面を消すために手を伸ばしたら、俺の手がアイテムボックスに吸い込まれた。
「は?」
指を動かす感触はするものの、手首から先が画面に入って見えなくなったため、反射的に手を引き抜くように腕を動かす。
引き抜いた手を確認できると、安堵のため息かこぼれた。
「よかった……ついてる……今度は……あった!」
公園の隅にあった公衆トイレへ移動して、洗面台についていた鏡の前で、アイテムボックスへ肘まで突っ込むように入れると、ちゃんと俺の手が映っている。
(俺からしか見えないようになっていない……でも、どうやって中から取るんだろう?)
アイテムボックスの中を探るように腕を突っ込んだが、何も手に当たらない。
(魔力回復薬(小)はどこに……あれ?)
取り出したいものを考えた瞬間、俺の手になにか筒のようなものが吸着された。
それを握って画面から腕を引き抜くと、液体が入った瓶を持っている。
(これも取り出したいって考えるだけでいいのか)
アイテムボックスを確認すると、先ほどまで表示されていた回復薬がなくなっていたので、ちゃんと取り出せたようだ。
再び瓶を画面の中へ入れると、表示されるので、中へ入れる方法も分かった。
(便利だな。だけど、リュックか何かの中に手を入れながらじゃないと、驚かれるから注意しよう……)
この便利な機能の性能を確かめるために、トイレの外に出て入る物と入らない物を調べることにした。
(生きている動物や虫は入らない。中へ入れると、燃えている枝も時間が止まったようにそのままの状態で保管される)
足元にいた虫や、野良猫を捕まえてアイテムボックスへ入れようとしたが、画面をそのまま通過してしまった。
さらに、落ちていた枝に火を点けてアイテムボックスへ入れたところ、燃えた状態で出し入れでき、中では時間が経過せずに保管されているということが判明する。
(すごく便利だ。買い物が楽になりそう)
新しい機能の使い方も分かったので、その他の項目にある【チュートリアル用境界】と向き合うことにする。
【チュートリアル用境界【危険度G】購入しますか? 使用P:
購入画面で止まっており、腕を組んでどうしようか悩んでしまう。
時間も深夜の12時を過ぎようとしており、明日でもいいかと思ってしまった。
ただ、スマホを見ても、何の連絡もない。
(まだお姉ちゃんや夏さんはレッドラインの境界で戦っている……俺だけのうのうと過ごしていい訳がない!)
強くなると決めた以上、時間を無駄にはしたくない。
(明日やるのなら、今やれば明日は別のことができる!!)
その想いを胸に境界の購入を選択すると、俺の前に青い点が生まれた。
青い点は空中を浮遊し、光を溢しながら一筋の線を作っている。
「本物の境界を作っているのか……」
夏さんから境界は自然発生するもので、どのように生まれているのかもわからないと聞かされていた。
俺が画面で購入したものがこのように現実に影響を及ぼす意味を考えようとしたら、お姉ちゃんの言葉を思い出す。
(そうだ。連絡をしないと……)
普段なら夏さんが代わりにやってくれていることだが、もしいない場合は境界の登録を自分で行わなくてはいけない。
スマホで教えられた番号へ電話をかけると、数回もならないうちに出てくれた。
「こちらは国立境界観測センターです。どうされましたか?」
少し若い女性の声で話しかけられており、普通に日常生活では聞かない用語が聞こえてくる。
本当に俺が知らないだけで、公的なハンター用の施設があるようだった。
「境界を見つけたんですけど……」
「場所を教えてください」
「えーっと……国道沿いにある――」
道をミッションが達成するまで走っていたため、ここが何という公園かわからない。
公園の入り口に名前が書いてあったので、それを伝えると少し待っているように言われる。
「その地点で発生したのは危険度【G】の境界ですね。どうしますかー?」
スマホを頬に押し付けるように持っていたら、相手の女性がつまらなそうにのんびりとした口調で話をしてきた。
危険度がGならポーン級の俺1人でも入ることができるので、突入申請を行う。
「突入したいと思います」
「……所属ギルドと氏名を教えてください」
なんとなく面倒くさいということが伝わってくるような間の後に氏名を伝えるようにと言われたので、俺は冷静に対処する。
「清澄ギルドの草凪澄人です」
「清澄ギルドの……え? 草凪澄人さん……ですか?」
「はい。ポーン級のハンターとして登録されていると思うんですが、突入してもいいですか?」
相手の女性は俺の名前を確認するように聞き返してきていた。
それを気にせずに、早く入らせろと言わんばかりに階級を伝えて、相手の反応を待つ。
「えっと……清澄ギルド、ポーン級ハンターの草凪澄人様。確認が取れましたので、境界への突入を許可します」
「ありがとうございました」
「はい……気を付けて……」
最後、相手が素になったのか、どこかで聞いたことがあるような声色で応援をされた。
(まあ、声が誰かに似ているなんてよくあるから気のせいだろう)
そう考えながら、俺は目の前の境界へ向かって足を踏み入れる。
宙に放り出されるので、着地をしなければいけないということを注意していたら、突然目の前に青い画面が現れた。
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