生存理由。

識織しの木

私は意味を求めた。理由を探した。

 なぜ生きているのだろう。

 なぜこの地にいるのだろう。

 意味はあるのだろうか。


 生活の合間に考えるのではなかった。考える合間に、生活していた。では、考える為に生きているのか。それは、そんなのは違う。

私の求めている答えではない。

 

 あの子は何のために生きているのだろう。生きることに理由を見出だせなくても平気な人たちが羨ましい。

「生」に何の疑いも嫌悪もなく生活していけたら、何と楽なことだろうか。

 私は「今」に、「生」に理由を求める。今ここにあること。生存していること。

確固たる意味が、欲しい。


 誰に訊いても、曖昧に濁されるか私には価値のない言葉を返されるかのどちらかだった。

「そんなことより勉強したら」

「僕は妻のためにかなぁ」

「生きていたらいつかわかるよ」

「そういうのは人に訊くもんじゃないぞ」

「私には叶えたい夢があるから……」


 違う。違う、違う!

 違うよ。そういうことじゃない。

 もっと、もっともっと大切な、核心的な何かなんだ。曖昧だって、よく言われる。変な子って、よく言われる。

 だって、しょうがない。私だって答えを知らないから。だから、曖昧にしか表現できない。

 だって、しょうがない。人間はみんな、どこか変なんだよ。変じゃないやつは、人間じゃない。

人間なんていう生物が「完璧」になれるはず、ないのだから。


 あれ?だったら、人間はみんな同じなのかもしれない。

 生きていることの本当の理由を、意味を知らないのかもしれない。

個人の狭い狭い視野で無理矢理作った「理由もどき」。かっこつかないからって偉そうに言っちゃった「悟りもどき」。


 皆、同じなんじゃないか。だぁれも、答えなんてしらなかったんだ。

私は馬鹿だった。ぐぢゃっとした落書きみたいな可笑しな線を書いて「これ読める?」って訊いていたのと変わらなかったんだ。

 正直な人は「読めない」と言う。

 威張った人は「え?読めるよ」とほざく。

 文字でも何でもないのに頑張ったら読めちゃった人は「こうだよね?」と検討違いのことを言う。


 あ、


 そうだ。


 死んでみよう。

 そうしたらきっと、生きることの本当の意味がわかるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

生存理由。 識織しの木 @cala

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ