プロローグ~異管局員~

元々この地球上には棲息していなかった想像上の認知存在。

それらが生体として具現化し、物理的に干渉可能となる事象が発生し始めた。

この事象を発現と呼称。発現した認知存在を異種存在ゼノと定義した。


政府は異種存在ゼノを観測・管理するための省庁を発足。

──異種存在管理局。通称、異管局。


……その異管局が今の俺の職場だ。


霧島キリシマセンパイ。最近、で起こっている問題はご存じですか?」


「ああ、賀茂カモか。昨日、議題に上がっていた水の精霊らの件だろう?」


「そうです。ウンディーネです。水の精霊って言ってもいっぱいいますから、せめて種別名カテゴリで呼んでください。差別問題のやり玉に挙げられても知りませんからね?」


「まったく…ただでさえワケのわからん魑魅魍魎ちみもうりょう跳梁跋扈ちょうりょうばっこして混沌としているというのに…」


「センパイ、難しい表現ばっかり使ってるとアタマが悪いように見られちゃいますよ!」


賀茂カモは優秀な部下だ。たまに一言多いのが玉に瑕だ。


「適切な場面で使っていれば問題ないだろう。そう感じる救いがたい馬鹿を気にするだけ無駄だ。」


「あ、それってアタシがバカっていってます!?ひどい!」


「お前はそういう救いがたい馬鹿だったのか。覚えておこう。」


「意地が悪いです!ホントに嫌われちゃいますよ!」


「わかったわかった。いいから仕事をしろ。仕事を」


賀茂カモで遊ぶのはここまでにして本題を切り出す。


「ちょうど水の精霊……いや、ウンディーネの件でお前に任せたい事がある。問題に挙がっているウンディーネたちの個体識別、およびでの在留許可が確認できていない。調査を頼めるか?」


「またそういう面倒な仕事を…といっても、この部署は私たち二人しかいませんもんね…わかりました、霧島キリシマセンパイ部長」


「敬称は重ねるな、どっちかにしてくれ」


賀茂カモは悪戯な笑顔を浮かべながら、踵を返し部屋を後にした。

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精霊賛歌 マツムシ サトシ @madSupporter

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