精霊賛歌

マツムシ サトシ

プロローグ~渡世人~

「アニキ!いいシノギ思いついたんスけど!絶対もうかりますよ!!」


こいつは俺の弟分、サラマンダーの辰巳たつみだ。

二つ名がサラマンダーなのではない。サラマンダーなのだ。

拳大の大きさのトカゲのようなやつで、体が燃えたり火を噴いたりする。


「タピオカッスよ!タ・ピ・オ・カ!

カタギの連中に人気でガッポガッポ儲かるって話ッスよ!」


流行には疎い。


「お前のう…タピオカが人気じゃって、いつの話をしよるんじゃ…

また誰ぞに変なことを吹き込まれたんじゃろ」


俺の兄弟分の樹人のじゅんが返事をする。

二つ名が樹人なのではない。樹人という種族なのだ。

2.5mほどの樹だ。歩く。根や枝を器用に動かし手足としている。


「のう兄弟。雲泥会うんでいかいとかいうんが最近ワシらのシマを揉ましとるじゃろう。新しいシノギもええが、どっちにしろあれを何とかせんといけんで。」


「淳のおじき!俺は無理ッス!だってあいつらお水撃ってくるじゃないッスか!」


雲泥会うんでいかいというのは、最近うちのシマを荒らすようになった新参の愚連隊だ。


ウンディーネの光海みつみとかいう女がアタマを張っている。

二つ名がウンディーネなのではなく…とにかく、そういうものなのだ。

こいつらは水の精霊だ。水を操る。ぱっと見ただけでは人間と区別がつかない。

気性が荒いというわけではないようだが、敵と見るや否や容赦がない。


──とまあ、俺はもう慣れてしまったのだが、

かつてはおとぎ話だか神話などでしか聞いたことがなかった

伝説・超常の存在、精霊だの妖怪だのといったものが

人間社会と交わり、共存しているのが今の世。


俺たちの渡世も例外ではなく、波乱は増える一方だ。

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