何か施設の、透明な筒型容器の中で目を覚ました『ぼく』のお話。
死者の魂を転生させる施設でのひとコマを描いた、すこしふしぎな物語です。
何か謎の獣として転生してしまった『ぼく』と、それを見守るふたりの施設職員。
長身痩躯の長髪男子サー・フィッツジェラルドと、金髪ゴスロリ少女イヴ。
もちろんこのふたりも、転生の結果としてこの施設にいる存在で……という筋の物語。
アクの強い、ファンタジーのような魅力的なキャラクターたちの、でもその前世の〝普通さ〟のギャップが楽しいです。
実は揃いも揃ってみんな普通のおじさん。
転生、といっても何に生まれるかを自分で選べるわけではないので、結構当たり外れがあるところが好き。
コミカルな雰囲気のようでいて、実はしれっとおっかないことを言っていたりするところも。
どうやら意思疎通ができなかったり、あるいは知能があるか怪しいケースもあるようで、その場合は「それまで」というのがなんともシビア。
生まれが選べないのは現実も一緒と思うと、ほんのり寂しさのようなものも感じるお話でした。