第12話 夢と覚悟

「相応しいって・・・」


 アイリスが困惑する。


「ばっかじゃないの?」

 エリザベスが鼻で笑う。カナメがそれに反応する。


「たっかだか、下着姿を見たくらいで、死刑と言う方がばっからしいんじゃありませんかね、王女さま~?」

「なんですって!?」

 怒るエリザベスを見て、カナメも自分なりに取り繕う。


「だから、見せることにできたことを感謝くらいの男になってやるよ」

「あ~、ないない。頭沸いてるんですかぁ~?」

「んだと?てか、即答かよ」

 顔を近づけるカナメ。


「カナメっ」

 アイリスが止める。

「めっ」

 アイリスがしかる。

「お願いに来たんでしょ。まずは謝って」

「お願い?」

 エリザベスがいぶかしげにアイリスを見る。


「はいっ、実は・・・カナメをディスターツ学園に入学させてほしいんです」

「はっ?」

 アイリスの言葉に一瞬驚いた顔をしたエリザベスだったが、

「ふ~ん、ふう~ん、ふぅ~う〜ん?」

 意地悪な笑みを浮かべながら、カナメを見る。


「・・・んだよぉ?」

 急にしおらしくなるカナメを見て、ここぞとばかりにエリザベスは畳みかける。

「え~、まず発情期なお猿さんが学校に入ること許すなんて、学校の女生徒が危険だわぁ。それにこのお猿さんは、知性もなさそうだしぃ、ん~どうしようかしら?」

 黙っているカナメ。


「まぁ、土下座してわたくしの足でも舐めながら懇願するなら考えてあげようかしらね?なんて・・・」

 カナメは座り込み、片膝を床につける。


「カっ、カナメ?それに、エリザベス様も・・・」

 ちらっとカナメはアイリスを見る。

(んだよぉ、やっぱり王族様は足を舐めろって言うんじゃねぇか)

 もう片方の膝も床につける。

(なんか、お前が嬉しそうに話をしていたから、いい奴なのかなって楽しみにしていたけど・・・)

 カナメは小さく息を吐いた。


「じゃ、そうさせてもらうわ」

 サバサバとカナメは言い切る。それを上から、不安そうに見つめるアイリスと、見下ろすエリザベス。

「簡単に土下座をする人が、わたくしに相応しい男になると思えませんけど」

「そっちはいいや。別に君に相応しい男になれなくても。俺は、魔法が・・・魔法が使えるようになれればそれだけでいい」

「何を言うかと思えば・・・魔法が使えればいい?全くもって、志が低いですね」

 夢を語るカナメとは対照的に冷ややかな目でエリザベスは見る。


「やっぱり・・・」

 カナメは顔を下げる。

「カナメ・・・」

 心配そうにアイリスが見る。



「やっぱり、そうなんだ!?この世界は魔法を使うのが当たり前なんだ!!」

 カナメは純粋そうに目をキラキラさせ顔を上げる。。

「くぅう~~!!。どうしようかな、魔法が使えるようになったら、やっぱ昨日会った奴らみたいに炎のパンチも打ってみたいな」

「昨日?」

「あわー、わー、わー」

 アイリスが両手を振りながらごまかす。


「いや~、空を飛ぶが鉄板か、ワープとか変身とかもやってみたいよな・・・まぁ、最初は消しゴムを動かす力とかでもいいなぁ。よ~~し!!色々魔法で遊ぶぞ~」

 その言葉にエリザベスは呆れる。


「魔法は闇を討つため、平和のため、社会の発展に使うべき神からの賜りもの。遊びに使うなんて考えているなんて、浅ましいですね」

「おっ。そうなのか?でも・・・」

「でも?」

「その神様は楽園を作ろうとはしないのか?」


 エリザベスは怪訝な顔でカナメを見る。

「楽園?」

「魔法で遊べるような世の中を作ればいいじゃん。遊ぶ余裕もない世の中なんて俺なら作らないな」

「あなたは神じゃありませんよ?」


 カナメは神と比べられると思っておらず、不意打ちに笑う。

「あぁ、俺はただやりたいことをやるために努力してる。それに・・・まぁ、それはいいや。まぁそん時が来たら一緒に遊ぼうぜ、エリザベス」

「そん・・・時?」

「あぁ!」


 つま先を寝かしつけ、正座する。満面の笑みのカナメ。

「安っすいプライドね」

「いや、これでも一つの世界を何度も制覇したんだぜ?俺」

(まぁ、でも・・・)

「人に土下座するのは、初めてだ」

 武術を学ぶ中で、礼に始まり、礼に終わる日々。研鑽した日々を思い出し、正座をしてから頭を下げるそれとは違う。

 しかし、同じように心を静寂に土下座をしようとするカナメ。


 スッ


 エリザベスがしゃがみ込む。

 そして、そっとカナメの頬を触れる。


 ペタペタッ


「なっ」

 意表を突かれたカナメのリアクションを無視して、エリザベスがカナメの体を触りだす。

「んー」

 興味津々に触りまくる。


「あのさ」

「何?」

「その・・・しゃがみ込むとパンツが気になるんだけど」

「やっぱり、不埒ね。あなた」

「普通気になるだろ」

 

 エリザベスはカナメの体に御執心で、言葉を適当に返しながら、心はここにあらずだった。


「よしっ」

 エリザベスが納得する。

 エリザベスは親指をカナメの目の下、頬骨のあたりに添える

「綺麗な目ね。やっぱりこの目は私の物にするわ」

 小悪魔のような顔をしてエリザベスはくすりと笑った。

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魔法の溢れた世界を肉体で凌駕する 西東友一 @sanadayoshitune

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