第11話 王女エリザベス

―――ギイイィ

 扉が開かれる。


(裏口か)

 カナメはとことん彼女は日の当たらない存在なんだと感じる。建物は立派なのだろうが、北側の入り口はちょうど南にある太陽によって、暗く寂しく感じた。


コンッ、コンッ


「はーいっ」

 ドアのノックに反応して、中から明るい少女の声がする。

「アイリスです」

「アイリス?いいわよ、入って」

 警戒心を解いた声で少女が言う。


ガチャッ


「失礼します。今日は・・・」

「おっ」

(でかいな)

「えっ」


 金髪のキレイなロングヘア―に、ピンク色の唇。健康的な肌。

 その肌は、靴下、下着、手袋、そして彼女の金髪が隠す以外の部分があらわになっていた。


「死罪ね」


 隠すこともなく、冷めた目でカナメに近づく少女。

「エリザベス様ぁ!?」

 アイリスが青ざめた顔をする。

 胸が触れるか振れないかの距離で、エリザベスが見上げながら、カナメを見定めする。


(でかいなっ・・・そして、)

「綺麗だな」

「なーーーーーっ」

 アイリスがもっと青ざめた顔をする。


「何様?」

「俺・・・」

 アイリスに袖を引っ張られ、『俺様』と言おうとするのを止める。

(てか、この状況はアイリス、お前が作ったんだろうが)

 カナメはどうしようか悩む。


(今さら・・・だよなぁ。礼節に気を付けたって)

「恥ずかしいもんでもあるまいし」

「わーーーーーーっ」

 アイリスが騒ぐ。


「そうね、恥ずかしいものではないわ」

 エリザベスは髪をかき上げる。

「でもね、どこぞの馬の骨に見せるほど安くもないの、お馬鹿さん」


 カナメはじーっとエリザベスの目を見る。自身に溢れた目。強者の目。

「ふふふっ」

 エリザベスもまた、カナメの目を見ていた。自身に溢れた目。強者の目。

「ふははははっ」

 カナメも笑う。

 急に笑い出した二人に困惑して、何度も見返すアイリス。


「あなたは誰?」

「古郷要と申します。以後お見知りおきを」

「以後?」

「はいっ、、お見知りおきを」

 急にかしこまるカナメだったが、言葉は力強い。


「とりあえず、死罪は無しにしてあげてもいいわ」

「ありがとうござい・・・」

「その代わり、その両目を差し出しなさい」

 カナメはが下げた頭を途中で止める。


「どう?それで許してあげる」

 固まるカナメ。

「あらら?ここにきて怖くなったのかしら?」

 ふふっと笑うエリザベス。

「カナメ・・・」

 アイリスが心配する。

「エリザベス様、今回のことは私が悪いんですっどうか・・・」

 

 ピッ


 エリザベスはアイリスの前に人差し指を立てながら向ける。

 アイリスは仕方なく黙る。


「ん~~~~」


 突然、カナメが変な唸り声を出す。

「考えたことなかった」

「はい?」

 意にそぐわない回答にエリザベスが不機嫌な声を出す。


「欲しいもののために、努力することは全然苦じゃないんだけど、そうか~何かを犠牲に手に入れるって方法かと思って」

「あなたね・・・」

 口調が砕けたカナメに対してエリザベスが怒ろうとする。

「努力じゃ手に入らないものもあるでしょ」

「君の心とか」

「なっ」

 エリザベスとアイリスが驚く。


「君の裸を見たに相応しい男になるから許していただけませんか?」

「はああっ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る