「禁忌に吠える」
主人が亡くなった。棺に入れられて、地面の中に消えた。脳裏に主人と過ごした記憶が過ぎる。晴れの日に散歩をしたこと。フリスビーを投げてくれた事。
主人の親しい人達が私の頭を撫でる。
「博士。どうして」
「長年、持病に苦しんでいたんですって」
「ふん、自業自得だ」
「化物を産みやがって」
主人の死に涙を流している方もいる中、参列者の中には主人に対して良くない目を向けている人が何人かいた。主人を歩く言う人は来ないでほしいものだ。
式の後も私は度々、主人の墓までやってきた。主人は何度も、私を特別な存在と言っていた。それほどまでに思ってくれていたのだ。なら私も思い続ける。この命が終わるその日まで。
あれからどれくらいの年月が経ったのだろう。私を知っている者はみんな、消えて主人の墓も草木に覆われていた。最後に顔見知りを見たのはいつ頃だろうか。記憶が正しければ二百年以上前だ。おかしい。普通、私のような存在はここまで長生きしないはずだ。
「化物を産みやがって」
以前に聞いた言葉が頭をよぎる。先生は生前、博士だったと聞いた。そうだとしたら私は一体、なんなのだ。ただの犬ではないのか? 主人や知り合いがいない今、確認する術はない。
すると上空から大きな音が聞こえた。目を向けると大きな機械が飛んでいた。突然の出来事に動揺していると小さく光る何かが飛んできた。それは私の体に刺さると同時に眠気を誘ってきた。
薄れゆく意識の中、複数の人間が来ているのが分かった。
「ようやく見つけたぞ。不老不死の犬を」
その言葉を最後に眠りに落ちた」
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