「紛い物の園」
他方からたくさん動物達の鳴き声が聞こえる。その状況が僕を非現実か空間へと誘ってくれた。
僕が今、いるのは動物園。人間社会にある動物の楽園だ。
久しぶりに動物を見たくなった為、ここまで来た。
いざ来てみるとそれはそれは楽しい。
長い鼻で器用に食事を取るアジアゾウ。思った以上に首が長いキリン。
突進されたら速攻お陀仏のサイ。そのどれもが個性的で魅力に溢れたものばかりだ。
白い体毛で覆われた大柄な北極熊。堂々とした振る舞いでケージ内を闊歩している。
気高い姿のライオンは気分が優れないのかガラスの向こうで眠っていた。
これだけ非日常を体験させてくれる施設でも近くに目を向けると日常が見える。
それはここが大自然ではなく、作り物でしかないものという事実をありありと僕に突きつけていた。
しかし、ここに生きる動物達は間違いなく本物。動き、息遣い。それにまがい物である証拠はどこにもない。
しばらくすると夕方になり、辺りを茜色の光が照らし始めた。
動物園を出ると眼前に広がるのはいつも見る光景だ。
灰色のビル。無機質な人の群れ。神経質な人。癇癪持ちな人。温和な人。
様々な人が溢れている。動物園の中も外も同じなのかもしれない。
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