「剥がれた」
懐かしい風景を視界に入れていた。数年ぶりに帰ってきた地元。
以前と変わらない街並みが目の前にあった。
小学校の時に遊び場にしていた煤汚れた団地はさらに年月が経ったせいか、見るからにボロボロになっていた。
住民も相変わらず似たような人間がいた。
昼間っから缶チューハイを持った小太りの母親と見るからに悪戯好きそうな男の子。
明日旅立つんじゃないかと思うくらいヨボヨボの婆さん。
相変わらずだな。感慨深さとは縁遠いため息をついていると、ひとりの作業着姿を男が目に映った。
俺はこの男を知っていた。中学時代の同級生だ。
あまり関わりはなかったが素行が良くなかったのは知っていた。
かつての同級生はこちらに気付かずに力なくタバコを蒸していた。
吸い慣れた風貌が年月の経過を顕著に表している。
「さて。戻るか」
手を組んで伸ばした後、今日の下宿先である実家へと足を進めた。
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