「支配者の支配者」


 大都会のビルの最上階。僕は夕食をとっていた。数日前までここにいるとは思いもしなかった。


 数日前、ノリでかけた投資が大当たりして一夜にして巨万の富を得たのだ。


 とりあえず僕は高級料理といういかにも金持ちが食っていそうなものを食べた。


 近くの客も様々だ。


 立派なスーツと時計をきた中年男性。重厚な威圧感を覚える着物姿の男性。僕と同い年くらいで派手な服装をした若い男。


 耳に入ってくる会話も金の話。事業の話。女の話。聞いているだけでため息がこぼれてくる。彼らが悪いのではない。


 ただ、猛烈につまらないのだ。


  金。夢。女。此処にいる人間は様々な存在に脳を支配されてやってきた。これからもそれを求める人もいるだろう。


 じゃあ、僕は一体、何に支配されているんだろう。


  脳裏に浮かぶ疑問を切り分けるように僕はステーキを食べ終えた。

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