「変面」
「ふざけるな!」
「申し訳ありません! ですが先方についてはご事前に連絡しておいたは」
「言い訳するな!」
真昼間。僕は上司から叱責を浴びた。上司が取引先で赤っ恥をかいたからだ。
向こうの情報を上司に伝えようとしたが、彼が傲慢にも拒否した結果だ。
すると上司の携帯が鳴った。舌打ちをしながらも液晶画面を見た瞬間,目の色が変わったのが見えた。
「社長! お疲れ様です! ええ! 取引の件ですか! 問題ありません! ええ! お褒めの言葉感謝します! 会食? 是非ご一緒させてください!」
急に上司の口調が変わった。電話先の相手は会社の社長のようだ。
先ほどの鬼の形相はどこかえと消えて,猿のような笑みを浮かべている。
その光景を見て,僕は子供の頃を思い出した。
母に怒られてる途中電話が鳴った。電話を取った途端,声音を変えて,急に高い声になった。
僕は怒られるよりこの変化の方があまりにも恐ろしかった。
その後、元の怒鳴りつけるような声になったけれど。
上司もそうだ。怒りの感情を抱いていながらも、自分より目上の存在である社長には自分の怒りをぶつけない程の冷静さは持っている。
上司も自信と同等,又は僕のように下の存在と関わっていれば怒りを滲ませた言動を続けて取っていたであろう。
しかし、今は社長だ。怒り浸透の鬼の仮面をとり,仏のような満面の笑みの仮面をつけている。
そして,電話を終えた瞬間,上司は再び鬼の仮面をつけ始めた。
同じ説教の繰り返し。ループ系作品を見ている気分だ。
結局,その説教は終業十分前まで終わらなかった。
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