「安価な幻想」

幸福。そう思える瞬間は片手で数えるくらいしかなかった。


 でも幸福になれる方法は知っている。


 眠る事だ。寝ているときは何もかもを忘れられる。


 夢の中なら何でも出来た。美味しいものを食べたり、ここではどこかに行くこともどんな願いだって叶えられる。


 まさしく幸福に満ちた世界だ。しかし、眠りというのはいつか必ず冷める。視界がいきなり光に包まれて、ゆっくりと目を覚ました。


 朝日がカーテンの隙間に差し込む度、ため息が出た。現実に引き戻されたからだ。


 眠りすぎていたせいか、こめかみが痛い。数時間後、僕は社会という濁流に飲まれる。


 しかし、よく寝ていたせいか、どこか晴れやかな気分だ。今日も幻想世界のたえに頑張ろうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る