「掌小説集」
「言の葉ワールド」

前のエピソード――「遅れる心」

　あなたがいなければ、私達は互いの心を傷つけ合う事もなかった。あなたがいなければこんな他人の意思に怯える必要はなかった。あなたがいなければ人を憎まずに済んだ。

　いっそあなたなんて無くなってしまえば良いのにと思う時もあった。そうすれば先ほど上げた悩みのほとんどは消滅するのだ。

　でもあなたがいたから私たちは繋がれた。あなたがいたから感情を形に出来た。

　あなたがいたから私達は愛し合う事が出来た。

　あなたがいたから私の今がある。ありがとう。

　

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