「遅れる心」

 幼少の頃、僕は勉強ばかりしていた。両親が勉学以外、何も与えなかったからだ。


 「遊ぶのはいつでも出来る。勉強は今しかできない。全てはお前のためだ」


両親の言ったその言葉を信じて、僕は必死にペンを動かした。同級生達と遊ぶことなどなく勉強漬けの毎日。朝を昼も夜も机にかじりついた。


 成績は上々で名の知れた高校や大学に進学することができた。そして、この国でも指折りの有名企業に就職できたのだ。


 これで幸せになれる。しかし現実な非情だった。待っていたのは理不尽と不自由な毎日。


 仕事で失敗を重ねて、周囲から指を指される日々。今だけだ。辛い時は今だけだ。学生時代になんども胸に言い聞かせてきた言葉を反芻し続けた。


 しかし、ある日僕の中で何かが壊れた。


 それからすぐに仕事を辞めて、お菓子とおもちゃに囲まれた生活をしている。時折、すすり泣く声が聞こえるが、気にしない。


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