「紳士の懐刀」

 僕達の歴史は古い。大昔から紳士達と関わって来た。一日、三日、一週間と紳士達によってはそれぞれだが、僕を手に取る。


 僕を巧みに操り、身だしなみを整えていく。ジョリ、ジョリという音が鳴るたびに紳士達は心地好さそうな声を上げる。


 しかし、出会いがあれば、別れもある。僕自身にも使える寿命があるのだ。そのまま使い続ければ、整えるどころか、紳士達を傷つけてしまう。


 名残惜しさと共にどこかホッとした気持ちだった。これで責務を終える。彼らを支えて来た英霊達の元にいけるのだ。


 そんな自己解釈を抱きながら、僕は無機質な箱の中に入れられた。

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