「単純作業」

 作業着に袖を通し、安全靴を履いた。これからアルバイトには励むためだ。


 現場に入るとそこは外とは違う,別世界だ。機械音や荷物の重さに呻き声を上げる従業員の声が聞こえてくる。


 内容は至ってシンプル。ベントコンベアーに乗ってくる荷物を仕分ける。誰でも出来る簡単な業務だ。


 ベルトコンベアーはどこまでも続く山の清流のように長い。現場から今日の荷物は多い。少ないだのそんな会話がちらほらと聞こえる。


 バイト先に不満はない。職場関係も良好だし、仕事もかなり楽だ。なのに何故だろう。ここにいると冷や汗が止まらないんだろう。

 

 世の中の役に立っているのは間違いない。労働という目に見える形で社会の歯車として働いているのだ。


しかし、大蛇のように巻きついてくる謎の焦燥感は絶えず、僕も蝕んでいく。安定ゆえに進歩なき世界。


 ここにいると自分もコンベアーに乗せられた商品と同じく、何らかの力で振り分けられてこんな仕事をしているのだなんて陰謀めいた事も考えてしまう。


 そして、そんな葛藤を胸に抱きつつも僕は業務に励むのだ。


  

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