「ダークヒーロー」
凍てつくような空気が漂う夜の公園。白い息を吐きながら、スーツ姿の男がベンチで一人、腰掛けていた。
男の右手には握る手が痛くなるほど冷えた缶ビール。左手にはモクモクと煙を登らせるタバコがある。
右横にはビニール袋にあった飲み干したビールの空き缶が入っている。
男はここしばらく仕事に追われて、息抜きをすることもままならなかった。そして、今日ようやく仕事が落ち着いて、あまりの嬉しさにいても立ってもいられなくなりコンビニで缶ビールとタバコを買い、公園で宴を始めたのだ。
呑んでは吸う。これを繰り返して、赤く染まった至福のため息をつく。
この時間、このひと時のために生きていると言わんばかりの勢いで酒を呑む。
酒、タバコ。人類とともに歴史を築いて来た。人間は遥か昔からこの悪魔たちと契約を行ってきた。人間にひとときの快楽を与える代わりに寿命を削り取る。
その契約の結果で今の社会があると言っても過言ではない。
彼や彼のようにこの悪魔達と契約し、苦難を乗り越えて来たダークヒーロー達は活力を与えられるが、これらと契約を切ろうものならものすごい苦しみを味わうことになる。
「くそっ! 酒がなくなっちまった!」
男は桃源郷から現実に引きずり戻された。彼に待っていたのは冷えた空気ともの寂しい夜の公園。
「くそっ! こんなもんじゃ終われねえ!」
男はふらついた足で公園を駆け抜けた。まるで悪魔のささやきに踊らされるように。
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