2章22.それは駄目な気がしたので

 色々とあった学祭も気づけば終わり、月曜日がやって来た。

 振替休日となっているので、平日ではあるが今日は休みだ。

 そして、この日に、バイト先のミニ水族館から連絡が来た。仕事内容の説明や研修を行うから16時に来て欲しいとのことだった。


 何か特別な事情があればまた別の日に個別に教える、という添え書きもあったが、特に用事も無いので三代は向かうことにした。


 今日一日は志乃もバイトを入れており、三代は暇を持て余して勉強をしていた所である。

 丁度良いと言えば丁度良かった。





 水族館が見えて来たところで名前を呼ばれた。


「藤原くん‼」


 振り返ると、面接の時に知り合ったはじめがいた。

 初対面からそこまで日数は経っていないのだが、なんだか久しぶりにあったような気がしてくる。

 不思議なものだ。


「久しぶりだな」

「数日前に会ったばかりなのに……」


 はじめは面白くなさそうに眉を寄せると、俯いて頬を膨らませた。


 とても可愛い仕草ではある――のだが男の子なのだ。

 どこからどう見ても女の子にしか見えないが――男の子なのだ。


「男の娘は男にあらず……しかし男の子であるのもまた事実」

「ど、どうしたの変なこと言い出して……。哲学か何かの話?」

「いや世の中は不思議なことが多いなと思ってな」


「よく分からないけど……ところで、藤原くん全然連絡くれないね?」

「……連絡?」

「連絡先交換したのに、全然連絡くれないから寂しいなって僕思ってたんだよ?」


「……寂しいと言われてもな。連絡する必要が無いのにしようとはあまり思わない方だからな。彼女とかならまた別だが」


 あくまでバイトの同僚だから、必要な時以外の連絡は控えるべきだ。

 三代はそう思っていた。

 しかし、はじめ的にはそれが面白くなかったらしい。

 唸っている。


「う~」

「何かあるなら、俺からの連絡を待つよりも佐伯の方からしてくれ」

「僕から連絡するのは何か負けた気がするんだよ~」

「ちょっとよく意味が分からない……」





 三代とはじめが中に入ると、副館長の小牧から水族館のロゴが入っている作業服と長靴を手渡された。

 まずはこれに着替えて貰う、とのことだったので、更衣室で早速着替えることに。


「一緒にお着換えだね」


 えへへとはじめが笑ったのを見て、三代はゴクリと唾を呑み込んでしまった。

 男同士だから何も問題は無い。

 だが、なんとなく、一緒に着替えは良くない気がした。


「……俺はトイレで着替えるよ」

「ど、どうして? 一緒に着替えようよ」

「なんとなく」

「実は僕が嫌いだったりする……?」

「そういうワケじゃないが、なんというか、着替えは一人でしたい主義なんだよ」


 適当な言い訳を並べ立てる。

 すると、はじめは純粋にも納得して「そっか……」と言った。

 少し残念そうであった姿に心が痛んだ。

 しかし、こればかりは譲れない。

 三代は作業服を片手に、そそくさとトイレに向かった。



~~~~

あとがき。


女の子だったら問題ですが、男の娘なので……セーフ……アウト……セウト? アウフ?(混乱)

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