2章14.いいんちょ爆発しなさい
高砂に協力したことによって、学祭に関わり手伝ったという面目は保てた。
委員長もこれで納得してくれたらしく、翌日には「よかろう」と満足気に頷いて、「あとは学祭当日にも裏方の調理班の手伝いをしてくれれば、それで十分だ」と語った。
三代と志乃はホッと胸を撫でおろした。
これで、何か言われることはもう無くなったのだ。
安心して帰ることが出来る。
ところで……今回の手伝いが終わって以降、ほんの少しだけ、クラス内の雰囲気に変化が訪れ始めている。
高砂と委員長だ。
三代以外はまだ誰も気づいていないようだが、高砂の方から、少しずつ委員長に接近している様子が見て取れるようになっていた。
「四楓院くん味見してくれますか……? ちゃんと出来るようになったので」
「高砂か。味見だな? 分かった」
芽吹き始めた淡い恋が実るのかは分からない。
だが、邪魔さえなければ、そこそこ上手く行きそうな雰囲気はある。
「ところで……学祭が終わったあと期末テストもありますけど、応援してるので、頑張ってください四楓院くん」
「うむ。目標は学年1位だ。……だが、それにしても不思議なことがある。ボクは普段から根を詰めて結構勉強する方で、予備校や塾にもそれなりに通っていることもあり点数も取れる方なのだが、なぜか1位が一度も取れないのだ。2位だ。……1位が誰なのか気にはなるのだが、個人情報の保護とかいう名目で、順位はそれぞれにしか伝えられない」
「誰……なのかな?」
「分からん。だが、次こそは必ずや1位を取るつもりだ」
「はい! い、1位取ったらお祝いです!」
「い、いや、お祝いはして貰わなくとも……高砂は自分のことを考えてだな……」
委員長と高砂の会話を耳にした三代は、なんとなく、自分が学年1位であることは隠した方が良さそうだと直感した。
バレたら面倒くさいことになりそうだ。
(それにしても、委員長が1位になれば、高砂との仲がもっと深まりそうな雰囲気だな。俺だって別に二人の邪魔をしたいわけじゃない。……次の期末わざと3位か4位くらいを狙うか。9教科900満点中890点くらいに抑えれば、多分それくらいになるだろう。いつも2位ってことは、委員長、アベレージで総合895点はいってるだろうからな)
そんなことを考えながら昼休みに欠伸をしていると、お弁当の卵焼きを口の中に突っ込まれた。
犯人は志乃である。
「隙あり!」
「……おいしいな」
「うん。愛情込めてるからね」
そう言われると、実際にも数倍美味に感じるのだから不思議である。
愛情という名の調味料はとてもよく効くらしい。
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