2章06.幼女の来訪
「形で感謝……定番はプレゼントか?」
そう呟きながら、三代はふと来月が12月であることを思い出した。
12月と言えばクリスマスである。
なんとも丁度良い時期に差し掛かったものだ。
クリスマスプレゼントとして贈るのが違和感も無く良さそう、という結論に三代に至る。
こうして日にちが定まった。
では次は、肝心のプレゼントの中身をどうするかだが……贈るにしても何を贈れば良いのだろうか?
「志乃が貰って嬉しいと思えるものじゃないとな」
頭を捻って考えてみるが中々思いつかない。
志乃の性格を考慮すると、贈りものが何であれ「ありがとー!」と喜んでくれるのは想像に難くない。
しかし、それが三代を更に悩ませる原因となった。
なんでも良いとなると、無限にある選択肢の中から、その中でも一番に志乃が喜ぶであろうものを自力で探す必要が出て来るからだ。
適当に「これでいいか」と手抜きはしたくない。
それでは、感謝の気持ちがあるとは言えないからである。
大変な作業になりそうだ。
☆
数日が経ち日曜日がやってきた。
日曜日の志乃は基本一日中バイトであるので、迎えに行く夕方まで三代は暇を潰すことにしていた。
というわけで、引き続きプレゼントについて思考している。
「さて……」
とりあえず、インターネットで女性が喜ぶものを検索してみると、幾つかのサイトを発見したので注意深くそれらに目を通していく。
そして、三代は困惑した。
これが一番喜ばれる! という品物とそれを選ぶべき理由が、サイト毎に食い違っていたからだ。
一方のサイトでは『肌身離さず持っていられる小物がベスト。見る度に彼のあなたの顔を思い出しちゃう。好きな彼のことはいつも忘れたくないのが女心。♡』とある。
しかし、もう一方のサイトでは『使い切れる化粧道具や肌ケア商品などが良いです。物として残る小物の類は地味に彼女も扱いに困ります。精神的に負担にならないプレゼントを用意するのが出来る男です。★』とある。
はたして一体どちらが正解なのか?
「むぅ……」
時計の秒針が進む音だけが、部屋の中で響き渡る。
その時ふいにインターホンが鳴った。
誰か来たようだ。
三代はひとまず考えるのは一旦止め、玄関を開けた。
「やっほーおにいちゃん」
そこにいたのは美希であった。
他に誰の姿も見えないところから察するに、一人で来たらしい。
「美希ちゃん……?」
「そうだよ美希だよ」
「一人で来たの? 電車とか大丈夫だったの?」
「美希だって一人ででんしゃ乗るくらいできるよ。……それよりおへや入ってもいい?」
志乃の妹であるし、それに何より一人でトコトコやって来た幼女を追い返すわけにも行かないので、三代はゆっくりと頷いた。
すると、美希はニパッと笑って部屋の中に駆け込んで来る。
「それで、いきなりやって来てどうしたの?」
缶ジュースを渡しながら三代が訊くと、返って来た美希の答えは非常にシンプルであった。
「なんとなく遊びに来てみたかっただけだよ」
どうやら、単に遊びに来ただけらしく、確かに言われてみれば見た目からしてそんな感じでもある。
動きやすいオーバーオールだ。
「……うん? おにいちゃんこれ」
美希は缶ジュースをごくごくと飲みながら、机の上にあるパソコンの画面を見た。
プレゼントについて調べていたのが表示されたままだったのだが……それに興味を抱いたようだ。
「おねえちゃんにプレゼントでもあげるの?」
「まぁね」
「……おにいちゃん、なにをあげるべきか迷っていると美希はみた」
図星を突かれ三代が渇いた笑みを浮かべると、美希がえっへんと胸を張った。
「ここは美希のでばんだね。おねえちゃんがなにをあげれば喜ぶか、おにいちゃんに教えてあげようかな」
三代は一瞬きょとんとしたものの、すぐに「それもありかも知れない」と思った。
美希は志乃の妹であり、かつ仲もそれなりに良いのだ。
好みなども熟知していそうである。
意外な所から、これ以上ない助っ人が現れたかも知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます