2章02.機嫌と気分を直しましょう
志乃に喜んで貰えるならと思い、三代もなし崩しに受け入れた改造計画ではあったが、結果的には失敗した。
志乃を怒らせて半泣きにさせてしまったし、そうして悪くさせた機嫌が良くなることは無く、むしろ徐々に酷くなっていったからだ。
マンションには一緒に来てくれたが、何を言ってもハムスターのように頬を膨らませて横を向かれる。
(このままだと志乃が帰る時間になってしまう。参ったな……)
三代がほんのりと眉をハの字にして頭を掻くと、それを横目に見た志乃が、膨らんだ頬を徐々にもとに戻した。
少しは怒りが収まって来たらしく、ぽつりとこう言った。
「だめなんだからね。他の女の子が近づいても、絶対にそっちに行ったらだめなんだからね……」
志乃の怒りの大部分は嫉妬であるようなので、三代はなんだかそれが少しだけ嬉しくて表情を緩めた。
「行かない。他の女の所には絶対に行かない」
「ほんと……?」
「本当だ。そもそも、前に言っただろ。志乃を貰うって。……一緒になると決めた女以外には振り向かない。絶対に」
素直で直接的なこの言葉は効果てきめんだった。
志乃は雰囲気を和らげると、三代の膝の上にすとんと腰をおろした。
「機嫌直ったか?」
「うん……」
やっと機嫌を直してくれたようだ。
これでようやく普通に話が出来ると三代はホッとして、こうなった原因についてあーだこーだと説明した。
☆
「……と、言うわけなんだが」
三代が全てを話し終えると、志乃が盛大な溜め息を吐いた。
「あの子たち……」
「まぁ、合コンはともかく、改造の方は途中から俺も少し乗り気になった。格好良くなれば志乃も喜ぶかなと」
「……そんなことしなくても、私にとってはもう十分格好いいの。それと、あたしの友達に何か言われてもついていかないで。……考えてみて。もしもだけど、あたしが三代の友達の男に何か言われてついていって、急にお洒落に変化起きたりしたら嫌な気持ちにならない?」
言われて見て、なるほど、と三代は思った。
「俺は友達がいないぼっち……というのはさておき、確かに立場を変えて想像してみると凄い嫌な気持ちになるな」
「でしょ。そーいうのは“めっ”だよ?」
「めぇー……」
「羊の鳴き声じゃなくて」
「分かってる。ごめんな……」
「うん。……あと、合コンは行かないからね。断るから」
志乃は三代の返事を待たず、スマホを取り出すと通話を掛けた。相手はもちろんあの5人のギャルの中の誰かだろう。
『志乃どしたのー』
「――合コン、絶対に行かないからね!」
『ありゃりゃ、こりゃだいぶ本気で怒ってるね……』
「人の彼氏を玩具にして、そのうえダシに使ってあたしを連れ出そうなんて、反省してよ!」
『……はぁ。失敗かぁ』
「反省!」
『はい。……でもずるいんだよねぇ。志乃だけ彼ピ出来るし』
「努力しなよ! あたしも努力したんだから!」
『……それは分かってるんだけどね。どうにも。っていうか、志乃相手に努力させるって中々凄いね藤原。大体は男の方から跪くのに』
「からかわないで。とにかく、じゃあね」
『うん』
志乃はぷんすか怒りながら通話を切ると、三代の首に手を回して、「気分直し」と言ってキスを要求して来た。
断る理由はないので、もちろん望み通りにしてあげた。
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