1章EX.そろそろ
今は11月だ。三代と志乃が付き合い出してから、それから2カ月ほどの時間が経過していた。
お互いの仲を更にジワジワと深め続ける日々は好調である。
喧嘩をしたことも一度も無く、今日も志乃を膝の上に乗せて一緒にゲームをしているところだ。
「あー負けそう!」
「今日は俺の勝ち――」
「――これならどうだ!」
志乃が振り返っていきなりキスをして来た。負けたくなくて、物理的に妨害を図ったらしい。
思わず三代はコントローラーを手から離してしまい、その隙に志乃に挽回されて負けてしまった。
キスという行為には慣れ始めているが、突然はやはり驚く。
「ズルいな」
「ズルくないもーん」
ニコニコ笑いながら、志乃はゆっくりと下唇を舐めると、
「そーいえば」
そう言ってふいに顔を上げた。
「学校では三代とお話をしないようにしてるけど……なんか微妙に気づかれてるっぽいんだよね」
「……なるほどな。まぁ、時間の問題ではあるのかもな」
校内では相変わらず接触を避けるように決めていたのだが、薄々関係を察した人たちが増え始めているらしい。
話はせずとも時折に交わすお互いの視線に熱が籠っていたし、それに加えて以前から立っていた噂も重なり、そこから気づく人は気づいたようだ。
「どうしたものか」
「……出来れば、あたしは隠したくはないかな」
「うん?」
「あたしの彼氏だーって周りに教えたい気持ちでいっぱいだもん」
「そんな可愛いことを言う口はこうだ」
そう言って、先ほどのお返しとばかりに、今度は三代から志乃へキスをする。
重ねた唇が離れるまでには、少々長めの時間を必要とした。
嬉しそうに瞼を閉じる志乃がなんとも愛らしかったせいで、満足するまでキスをしたくなってしまったのだ。
「……まぁ秘密にする理由も確かにもう無いな」
キスを終えた後に、三代は交際を周りに隠していた理由を振り返る。
特別な事情があるわけではない。
変な噂が立ったりしたら志乃も困るだろうとか、単にそんなことを考えていたからというだけだ。
しかし、当の本人は困るどころかむしろ望ましいと言っている。
ならば、三代としては無理に隠す必要はもうどこにも無かったし、実は付き合い出してからは周囲に見せつけたくて仕方が無かったりもした。
自慢がしたいわけではない。
志乃は美少女だから当然に密かに狙っている男も多く、交際の公表はそういった相手に対して強いけん制になるからだ。
諦めさせることが出来るのだ。
「取り合えず……近い所から徐々に広めて行くか。志乃の友達あたりから」
「分かったー」
かくして。
少しずつ広めて行く方針で話は纏まったのであった。
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