07 final & prologue.

 変わっていく景色と共に。走る。


 朝陽が出て。空が夜から紅、そして青に変わっていく。それを見ながら。走る。


 彼女は、隣にいる。


 忘れられない。


 事故のことも。車への恐怖も。それでも。


 いつものペース。彼女と一緒に、走る。


 分岐点。彼女とふたりでストレッチをして。お互いに汗を拭って、また走り出す。


 一度帰り、ふたりでシャワーを浴びて。ふたりで着替えて。仕事に向かう。


 車。青い空。昇っている太陽。


 車の助手席は、世界が違う。速度。空の見え方。景色。街の色。すべてが、変わって見える。


「ありがとう。助かった」


「帰りは?」


「19時」


「待ってる。ここで」


「ああ」


「脚。付けるね」


 彼女が、慣れた手つきで義足をはめる。その暖かさと優しさで。彼女がいることを、たしかめる。


 お礼に軽くキスを交わして。車を出る。


「いってきます」


「はい。いってらっしゃい」


 彼女が一緒にいる。それだけで、すべてが新しく新鮮な、普通の日々。

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走る 春嵐 @aiot3110

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