卒業式

第313話 きっとその職業が、幸せでありますように。

 朝焼けが照らすカルナの研究所の屋上で、ゼウシアとイージスは二人きりで話していた。


「イージス、すまないな。俺はお前に何一つ父親らしいことはしてやれなかった。本当に、すまない」


「良いですよ。父上が俺たちのことを思ってくれていると分かって、俺は嬉しいんです」


「本当はもっとお前らにいろいろしてあげたかった。だけど俺の不死の肉体はもう維持できなくなってきている。だからイージス、ここでお別れだ」


「父上……」


「俺はもう生きすぎた。だがお前の成長を見れて嬉しかったよ。せめて、選んだ職業に進む道を見てみたかったよ」


 ゼウシアは優しく笑った。


「イージス、マリアンヌに伝えてくれ。死んだ後でも愛していると」


 ゼウシアの体は灰になって風に流され、消えていく。

 泣きながら、イージスはゼウシアへ言う。


「ありがとう、父さん」


 ゼウシアは死んだ。

 さよならも言わず、ただ笑って死んでいった。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 卒業式、イージスは母マリアンヌとともに笑顔で写真に写っていた。そこに写されたイージスの表情は、何か苦しみから解放されたような笑顔であった。

 ーーいや、違う。

 全てに決着をつけた。そこで得たものを受け止め、成長し、苦しんだ末に出した自分という姿に笑みを浮かべた。


 卒業アルバムにとじられた写真の中には、イージスとアニーの二人きりの写真、他にも多くの写真があった。

 それをイージスはアニーとともに見ていた。


「ねえイージス、結局魔法職は何にするの?」


「たった四人の至高の魔法使い」


「もしかして……」


「俺、魔法聖になるよ」


「イージスらしいね。だったらさ、私も魔法聖になるよ。実際、私も最初から決めていたから。魔法聖になるって」


「アニー、行こうぜ」


「行くって、どこに?」


「そんなの決まっているだろーー」



 ーーきっとその職業が、幸せでありますように

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魔法使いの空飛ぶ学園 総督琉 @soutokuryu

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