創作ノート④ メナムの残照
タイ国、あるいはタイ人と関わった事のある人なら、『メナムの残照』、あるいは『クーカム』という作品について耳にした事があるかもしれません。
トムヤンティという人の書いたこの小説は、タイで何度もドラマ化、映画化された、まさに「国民的メロドラマ」とも言うべき超人気作です。
実はこの作品、なんと、太平洋戦争時代を背景に、タイの娘と日本の青年軍人との恋愛を描いたものなんですね!!
これを私が読んだのは高校生の時。「タイの小説を読むなんて、なんつー渋い高校生!」と思われるかもしれませんが、これ、あの歴史の山川出版発行の『文学作品で学ぶ世界史』っていう本で紹介されてたんです。そして、私が読んだのはなんと角川文庫版!!(角川さん、いい仕事してますね~~!)ただしこちらはダイジェスト版でしたね。後年別の出版社から出た完訳版を読みました。
太平洋戦争なんて、日本人が徴兵されてが中国行って戦ってパールハーバー爆撃して、アメリカに原爆落とされて…位の知識しか無かったので、東南アジアでこんな事が事があったのか……と、当時の高校生の私にとって本当に勉強になりました。
この小説の小堀という日本の軍人は、タイ人の恋人を「日出子」と日本の名前で呼んだりして(彼女の名前のアンスマリンが日の出を意味するらしいから)、ちょっと自分本位に感じられる部分もあるんですが、正義感の強い優しい人物として描かれています。タイ人の対日感情が良いのはこの小説の影響が大きい、とも聞いた事があります。
とはいえ、この作品は単純に、「日本人日本軍は素晴らしい」と礼賛する類の話ではありません。ヒロインの元恋人は抗日地下組織「自由タイ」の一員。愛してはいけない人を愛してしまったヒロインの葛藤から、当時のタイの置かれた複雑な立場を考えさせられました。
私はこの作品を読んで感じた事がありましす。それは「国と国との関係とはまた別に、人と人との関わり方には様々な形がある」という事です。
ヒサリ先生を描くに当たって、『メナムの残照』の小堀はいくらか影響を受けていますね。
映像化作品については2013年度版の映画だけ見た事があります。戦争ものとは思えない甘々な主題歌にはビックリですが、結構気に入って、執筆中何度も聞いてました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます