第140話 たまの気分転換で現れた人。

八月。

学校は既に夏休みへと突入。妊婦には、少しだけ辛い暑い日々が続いていた。


まこ「柚月、光希の運転で海にドライブ行かない!?」

柚月「え!光希さん、車の免許取ったの?」

まこ「随分前に取ってたみたいなんだけど、教員採用試験に無事合格するまでは、乗るのを控えてたみたい。」

柚月「行きたい!!宜しくお願いします!」


まことの電話を切ったあたしは、大きなお腹を手で支えながら支度を開始。

最近、お腹が一段と大きくなり胎動も激しい。

時には激痛が走る程、お腹の赤ちゃんは順調で夜中になると特にあたしのお腹を蹴り飛ばしては寝かせてくれない事も。


性別は敢えて聞かない事にしている為、生まれてからのお楽しみ。

どっちでもいい。早く会いたい・・・、会って早く言いたい。


『会えたね』と・・・。


母親「柚月ーっ、まこちゃん達来たわよー!!」

柚月「今行くーっ!!」


あたしは階段をゆっくりと降り、玄関のドアを開けた。


大地「やぁだぁーー!タヌキに化けてんじゃーーん!!」

柚月「・・・あんた誰だっけ?」

大地「ブス復活しちゃってぇー!!ぽんぽこりーん!!」

柚月「え、これ夢だよね?」


目の前には、更にデカくなった変態の巨人・・・。

あたしは、思わずまこを睨んでしまった。


まこ「えっ(笑)ダメだった!?」

光希「大地君、柚月ちゃんは妊婦だからお手柔らかに・・・」

大地「大ちゃんも廉君の子、授かりたぁーーいのっ!」


『気持ち悪いんだよ。』


三人の声がリンクし、同時に笑みが溢れた。

告別式以来の大地君。あの日の涙は忘れていない。

きっと・・・、この態度はあたしを元気付けてくれる為の・・・


大地「うーみーはー、ひろーいーな!でもブスはおーきーいーなぁー!!」

柚月「あはははっ!沈めるよ?」

まこ「まぁまぁ!!とにかく海に行こうよ!!」

光希「そうだね!!花火も買ったし、今日は楽しもう!!」

大地「そうだよ!!ウダウダ言ってないで行くよブス!!」


お腹の赤ちゃんが・・・大地君の声に反応してボカボカお腹を蹴りまくってくる。

それも、楽しそうにポコポコと・・・。


柚月「光希さんの運転、初めてです。」

光希「安全運転だから、安心して(笑)」

まこ「大地!!柚月と仲良くしなさいよっ!」

大地「はぁーーい!!やぁだ!!」

柚月「こっちから願い下げだっつーの!!」


一年ぶりの海。

去年は大地君と廉と三人で来たっけ・・・。

懐かしい。とても懐かしくて・・・


大地「泣くな、ブス。」

柚月「泣いてないっ!!」

大地「いつも一緒にいるだろーが。」

柚月「分かってるもん。」


大地君は全てを悟ってくれている。

『ありがとう。』

絶対口にしない言葉を胸にしまい込み、あたし達四人は真夏の海に到着した。



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