第139話 七色の日。

まこ「柚月ーーっ!学校行こー!!」

柚月「ちょっと待って!!」


安定期に入ったあたし。お腹も少しだけふっくらしてきた。


まこ「鞄、持つよ。」

柚月「ありがとう。」

まこ「同じクラスになれて良かったね!!」


そう。クラス替えの新学期。

先生の粋な計らいなのか、あたしとまこは同じクラスになった。

そして・・・廉も。

旧二学年の希望で、今年一年、廉も「進級」という特例の形を先生達が認めてくれ、机を用意してくれた。


まこ「つわり大丈夫?」

柚月「うん。もうほとんどないよ。あっ!そういえば、今日から光希さん来るの!?」

まこ「うん!!楽しみぃー!!」


光希さんは教員採用試験に無事合格。

今日からこの高校に正式に『体育教師』として就任して来る。


本当に目まぐるしい程あっという間に月日は過ぎて行った。

光希さんが体育教師という事もあり、お腹に差し支えがある授業は「休んでていい」との有り難い計らいで、他のクラスメイトも何かある度に荷物を持ってくれたり、階段を上がる時は後ろで支えてくれたり・・・。


本当にみんなの協力あってこその学校生活だと、感謝の気持ちでいっぱいだった。


そして、妊婦健診も特に異常はなく、お腹の中の子はすくすくと成長してくれていた。


まこ「どうだった!?」

柚月「うん、元気だって!」

まこ「性別は!?予定日はいつ!?」

柚月「もう少ししたら分かるかも!!予定日は今のところ九月十五日!!」

まこ「柚月はどっちがいいの!?」

柚月「どっちでも!元気に生まれてくれればそれでいい。」


いつも付き合ってくれるまこに感謝しながらも、季節は七月。

学校終了後、あたしは週に三回はお邪魔していた結芽さんのもとへと向かった。


柚月「結芽さーーん!!」

結芽「柚月ちゃん!!もうっ!迎えに行ったのに!!大丈夫!?」

柚月「適度に運動もしないと。廉に会ってもいいですか?」

結芽「勿論!!廉も待ってたと思うよ!?」


あたしの妊娠が発覚してから、結芽さんは少しだけメンタルが復活した。

拓さんを失い、そして廉までをもを失い・・・。

『生きる気力』を見出だせないままでいた最中でのあたしの妊娠。


『廉の子供』


それだけで、結芽さんの活力が今、こうしてあると思っている。


柚月「失礼します。」


あたしはリビングをすり抜け、畳の部屋へと入る。


柚月「廉、ただいま!」


少しだけ重いお腹を支えながら、あたしは正座をして廉に線香をあげた。


柚月「廉、赤ちゃん元気に育ってるよ。どっち似だろうね!?」

結芽「柚月ちゃん。」

柚月「はい?」

結芽「明日って、学校休みだよね?何か予定入ってる?」

柚月「いえ、特に何も・・・」


『明日、拓の命日なの。一緒にお墓参り、付き合ってくれない?』


拓さんの命日。拓さんがこの世から姿を消した日・・・。

そういえば、昔桂太先生に拓さんの命日、教えてもらってた事、すっかり忘れてしまっていた。


柚月「行きます!!」

結芽「お腹、大丈夫かな?」

柚月「大丈夫。色々と報告もしたいし、連れてってください。」

結芽「分かった。じゃぁ、明日朝十時に迎えに行くね。」


拓さんの命日。

七月十六日。あたしは、こう覚えていた。


『七色の日』・・・つまり、虹色の日だと・・・。


そして、翌日。

あたしは迎えに来てくれた結芽さんの車に乗り、拓さんのお墓に到着。お互い、色々と積もる話もあり随分と長居してしまったが、お墓も綺麗になったところで、二人に『また来るね』と約束を交わし、あたしはそのまま自宅まで送ってもらい、結芽さんと別れた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る