第138話 新たな命。

柚月「廉とあたしの赤ちゃん・・・」

結芽「避妊、しなかったの!?」

柚月「あの時は盛り上がっちゃって・・・」

結芽「どうするの!?」


どうするもこうするもない。

答えは一つ。


柚月「産みますよ、必ず!!」

結芽「でも、まだあと一年学校が・・・」

柚月「お母さんと話し合ってみます。」

結芽「あたしも行く。廉の母親として謝らなきゃ。」


あたしは結芽さんの車に乗り、自宅へと到着。

結芽さんも一緒だった事に少し驚いていたお母さんだったが、『話があるの』というあたしの言葉で何かを悟ってくれたのだろう。お母さんは笑顔でリビングへと迎え入れてくれた。


柚月「お母さん、あたし妊娠したの。・・・廉との子なの。」

結芽「本当に申し訳ありません。大事な娘さんの身体を・・・」


『おめでとう。』


お母さんから出た言葉に、あたしも結芽さんも目が点になる。


柚月「怒ら・・・ないの?」

結芽「あの・・・、聞いてました?柚月ちゃんが妊娠をしてしまって・・・」

母親「どうして怒るの?これは運命なのよ。柚月の中にいる子が柚月を選んでお腹に宿ったの。素晴らしい事じゃない!?」

柚月「産んでいいの!?」

結芽「・・・頭、大丈夫ですか!?」


『何がなんでも頑張って産みなさい。協力するから。』


お母さんの言葉に結芽さんが泣き崩れた。


柚月「結芽さん!!あたし、頑張って廉との子供、産みます!!」

母親「ただし、一つだけ条件があります。」

柚月「条件?」


『頑張って高校を卒業する事。』


母親「お母さんも学校の先生に説得して、どうにかして通えるようにお願いするから。」

柚月「・・・分かった。卒業する。」

結芽「お母さん、あのっ・・・」

母親「結芽さん。これは廉君が残してくれた大切な命。あたし達で守りましょう!?」

結芽「ありがとう・・・ございます。」


『柚月ちゃん、ありがとう。』


結芽さんが見せた久しぶりの笑顔。

あたしも思わず笑顔になる。


柚月「お母さん、ありがとう!!」

母親「ううん、礼を言わなきゃいけないのは廉君によ。」


十七歳の冬。あたしは『母親』となった。

もう、一人だけの身体じゃない。

廉とあたしの赤ちゃんが、あたしのお腹の中で頑張って生きようとしている。


『守りたい。』


そして、翌日。

あたしとお母さん、結芽さんは少し送れて学校へ行き、担任、学年主任、教頭、校長先生と『高校三年間をちゃんと卒業したい』事を直談判。


担任と学年主任は困惑な表情をしていたが、教頭と校長先生が

『頑張って卒業しなさい。』

と、許可がおり、ホッとしたあたしは残り約一年間の高校生活をお腹の子と一緒に卒業する決意をした。


送れて授業に入り、休み時間。

まこが心配そうにあたしの様子を伺いに教室にやって来た。


まこ「大丈夫?」

柚月「うん!!」

まこ「え?何で元気なの!?」

柚月「廉に聞いて!!ね!?廉。」


あたしがお腹に手を当てると、まこが目を丸くして跳び跳ねた。


まこ「嘘でしょ!?」

柚月「本当っ!!」

まこ「おめでとう!!柚月っ!!」

柚月「ありがとう、まこ。あたし、頑張って卒業するから応援してね!!」

まこ「こ、光希にも伝えなきゃっ・・・!!」

柚月「そんな慌てないでよ(笑)」


あたしは廉の机に座り、小声でこう呟いた。


『廉、ありがとう。』


こうして、あたしはつわりを何とか乗り越えながらも無事三年に進級。

妊娠五ヶ月目に入ろうとしていた。


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