第135話 現実へ戻れない日々。

柚月「お邪魔します。」

菜緒「柚月ちゃん、おはよう。」

柚月「菜緒さん、おはようございます。」

桂太「ゆっくり休めたか?」

柚月「はい。あの、廉は!?」

桂太「一緒に行こう。」


桂太先生に連れられ、リビングの奥にある畳の部屋へと向かう。

すると、スーツを来た二人組の男女が、廉を白い服に着替えさせていた。

そして・・・、そのすぐ側には結芽さんの姿。


柚月「何してるのっ!?」

桂太「ちゃんと拓に会えるように準備をしてるんだよ。」

柚月「結芽さんっ!いいんですか!?」

桂太「古川。結芽ちゃんもまだ立ち直れてないんだ。」


泣くわけでもなく、何をするわけでもない。

結芽さんはただ、廉の顔をじっと見つめたまま動かない。


桂太「結芽ちゃんだって、古川と同じ位・・・いや、それ以上辛いんだ。」

菜緒「拓だけじゃなくて、廉までもを失ったんだから・・・。」

まこ「柚月、みんなで結芽さんを支えてあげなきゃ。」


廉の支度は着々と進み、祭壇が飾られた。廉は四角い棺の中に入れられ・・・沢山の花が部屋中に飾られ出す。


そして、夕方。

近所の人々や、学校の担任、校長先生達が次々と家を訪れ、廉の顔を見ては涙を流して行く。

それを、他人事の様に見ているあたしは流れ作業の様に行き来する人々を黙って見ているしか出来なかった。


そんな事が夜通し続き・・・、あたし達は一睡もする事なく翌朝を迎えた。


まこ「柚月、場所を移動するよ。」

柚月「どこに行くの?」

光希「今から告別式だよ。」


まこと光希さんに連れ出されるがまま、あたしはバスに乗り込み斎場へと向かった。

斎場に到着すると、会場の外にはクラスメイト全員の姿があり、そしてそこには・・・大地君の姿もあった。


柚月「大地君。」

大地「柚月ちゃん、大丈夫?」

柚月「大丈夫。だって、これドッキリでしょ!?」

まこ「大地・・・。」


まこが大地君に対して首を横に振った。

何かを悟ったのか、大地君は小さく頷いた後、廉の棺がある斎場の中へと入って行った。


まこ「柚月も行こう。告別式、始まるよ。」

柚月「うん。」


喪主は結芽さん。

しかし、憔悴しきっている結芽さんではどうしても任せられないと判断した為、代理として桂太先生が参列者に故人・・・廉に変わって挨拶を述べた。


そして、一通りの作業が終わり、いざ出棺。

クラスメイトのすすり泣きの声や、廉の名前を叫ぶ男子生徒、泣き崩れる大地君に一礼をし、結芽さんは廉の遺影を抱き締めたまま、車の助手席に乗せられた。


そして、廉は長いクラクションが鳴り響く中、火葬場へと向かった。

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