第133話 幸せからのドン底。

隊員が 「到着しました!降りて下さい!」


『心臓マッサージ、変わります!!』


救急搬送前で待っていた看護師・・・。


柚月「結芽さん!?」

結芽「廉っ!!頑張るのよっ!!」

隊員「宜しくお願いします!」

結芽「分かりましたっ!!」


我が息子の心臓マッサージを、母親である結芽さんへとバトンタッチされ、廉は中へと運ばれて行く。


隊員「彼女さんは待合室でお待ち下さい。」

柚月「分かりました。」


そして数分後、光希さんとまこがタクシーで病院へと到着。


まこ「柚月!!」

柚月「まこ!!」

光希「廉はっ!?」

柚月「結芽さんが夜勤だってみたいで・・・」

光希「結芽さんが、廉を!」

まこ「結芽さん・・・辛いよね・・・」


そんな話をしていた時、結芽さんではない他の看護師があたし達の前に現れた。


『誰かA型の方はいませんか!?』


柚月「あたし、O型だ。」

光希「俺、A型ですっ!!」

まこ「あたしも!!」


『輸血させて下さい。ここに同意書があるのでサインを!!』


光希さんが殴り書きでサインをし、看護師の案内のもと、小走りで廉のもとへと向かった。


柚月「廉・・・」

まこ「きっと大丈夫。きっと・・・」

柚月「これ・・・、さっき救急隊員の人から預かったの。廉の荷物。」

まこ「この封筒、何?」


まこが不思議そうに封筒の中を開け、用紙を開き・・・


まこ「ごめん、柚月・・・」


まこは両手で顔を覆い、声を出しながら流れ出る涙を堪える事なく泣き出した。

一方、あたしは未だ完全にこの状況を受け入れられていないのか、泣いているまこの肩を引き寄せ、抱き締める事しか出来なかった。


それから、どれほどの時間が経過したのだろう。

集中治療室から、光希さんと結芽さんがあたし達の所へやって来た。


まこ「光希!!」

柚月「結芽さんっ!!廉はっ!?」


光希さんは待合室のソファーになだれ込む様に座り、突然まこを抱き締めた。


まこ「光希!?」

光希「まこっ・・・!!」

柚月「結芽さん!?廉はどうなんですかっ!?」

結芽「うん・・・」


呆然としている結芽さん。

運ばれてきたのが我が息子となれば、驚くのも仕方ないだろう。

緊張の糸がほどけたのか、結芽さんは床に座り込み・・・

そして、一言だけ言葉を放った。


『助けてあげれなかった。』


柚月「え・・・?」

結芽「車に轢かれた時点で、即死だったのよ。」

柚月「廉は・・・?ねぇ、結芽さん!!廉は!?」


あたしが結芽さんに廉の状態を聞いていた時、バタバタと桂太先生と菜緒さんが駆け付けた。


桂太「結芽ちゃん!!」

菜緒「廉はっ!?」

結芽「廉は・・・」


『今から霊安室に運ばれるの。』


光希さんは肩を震わせながら泣き出し、まこの頬には涙がつたい・・・。

ガクンと肩を落とす結芽さんには、桂太先生と菜緒さんが寄り添う。


柚月「嘘だ。」

まこ「柚月っ、どこ行くのっ!!」


信じられない。信じたくない。

きっとこれはドッキリだ。そうに違いない。


廉が。

あたしの世界一大好きな廉が死んだなんて・・・


柚月「絶対に嘘なんだからっ!!」


あたしはまこの腕を振りほどき、霊安室へと向かった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る