第129話大好きな結芽へ。

『そして、大好きな結芽へ。』


菜緒「結芽。」

結芽「大丈夫・・・」


拓「結芽、ごめんな。もし隣にいたなら抱きしめてやれるのに。本当、無い物ねだりだな。昔も今も結目には迷惑かけてばかりで、自慢出来る事なんて何一つないけど、結芽を想う気持ちは今も、これからも誰にも負けません。俺の中で、一番はずっと結芽です。結芽があってこその廉だから。」


『残して先にいなくなる事許して欲しい。』


画面の拓さんの目から自然と流れた涙・・・。

でも、一度も画面から視線を離す事なく、あたし達にメッセージを残そうとしてくれている。


『桂太、菜緒。結芽と廉を頼むな。』

それから・・・。

『これから廉を愛してくれる人へ』




『俺の息子を、どうか宜しくお願いします』




拓「結芽の笑顔が生きる勇気を与えてくれました。何気ない日々が、とても幸せでした。心から、結芽を愛してる。これからもずっと。この世を去っても、ずっと。そして俺は・・・」


『沢山の仲間に出逢えて幸せでした。』

『みんな、大好きだよ。また、会える事を信じて・・・』


『またな。』


拓さんの深いお辞儀と共に、画面が真っ暗になった。

深い愛情と、深い絆が詰め込まれている画像が、みんなの涙を誘う。


・・・と、感傷的に浸っていると、何故か再び画面がついた。


拓「あっ、あの!!言い忘れたんだけど、俺の骨は沖縄の海に流してください。ヨロピコ!!」


結芽「・・・いやいや。」

桂太「何言ってんだこいつは。」

菜緒「今更墓を掘り起こせってか?」


『馬鹿なの!?』


拓さんらしい締め方なのかもしれない。

悲しみで終わらせないように、ちょっとしたアドリブを入れたのだろう。

・・・それなのに・・・。


廉 「沖縄に父さんの骨を・・・」

結芽「ここにも馬鹿がいた。」

桂太「どこまでそっくりなんだよ(笑)」

菜緒「柚月ちゃん、大変ね・・・」

柚月「いえ、大丈夫です・・・」


結芽さんはどこか晴れやかな表情をしていて、廉は少しだけ大人になった表情をしていて。


拓さんは、いつまで経ってもこの二人を・・・ううん、『みんなを』見守ってくれているんだとあたしは嬉しく思えた。


光希「拓さんってやっぱいい親父だよな。」

桂太「廉、ちゃんと前を向いて歩けよ!!」

廉 「あぁ、分かってるよ。」

結芽「・・・そうね、いつだって後悔の無い日々を送る事が、拓に対しての恩返しになるのかもね。」


松澤拓は確かに今も心の中に存在し続けている。

そして、いつの日もあたし達の脳裏には、拓さんの笑顔がしっかりと焼き付けられている。


命を経つことはとても簡単。

でも、反対に生きて行く事は本当に難しくて・・・。

日々悩みながら、後悔しながら、泣きながらこの先も過ごして行く事もあるだろう。


でも、それでも『生きている』事が一番大事。

拓さんは、それを一番に伝えたかったのかもしれない。


結芽「光希君、ありがとう。」

光希「いえ、遅くなっちゃって・・・」

結芽「このタイミングだったのよ、きっと。」


今、この時。

拓さんが教えてくれた天国からの言霊・・・。

必ず受け継がれて行くはず。これからもずっと・・・。


廉 「骨・・・。」

柚月「まだ言ってるの!?冗談に決まってるでしょ!!」

廉 「幸せにするからな、柚月。」

柚月「・・・うんっ!!」


今夜はこれでお開き。


『結芽さんと廉を二人きりにしてあげよう。』


桂太先生の計らいであたし達は解散した。

そして、翌日。

あたしは明日のクリスマスデートに向け、美容室に行き、初めてのネイルサロンへ向かい・・・。


そして夜。

廉と明日に向けての待ち合わせを電話で話し合った。










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