第127話 眠っていたDVD

柚月「・・・あれ、廉起きてたの?」

廉 「ずっと柚月の可愛い寝顔見てた。」

柚月「えっ、やだ廉って・・・」

廉 「ていうのは嘘で、いびきうるさくて寝れなかった。」

柚月「あ、そう・・・なんだ。ごめん。」


朝八時前。

明後日はいよいよクリスマスデート。

今日は一日廉の家でゆっくり過ごす予定・・・というか、結芽さんにそう命じられているので、あたしと廉はこれといった用事も無く、ダラダラとした一日を過ごしていた。


柚月「結芽さん、おはようございます。」


リビングへと降りたあたし達の前には、いつもと変わらぬ結芽さんがいた。


結芽「あら!おっはよー!!」

廉 「昨日のテンションはどこ行った?」

結芽「朝ご飯、用意しといたから勝手に食べて!!」


テーブルの上には、結芽さんらしくもない朝食のメニューが並ばれてある。


廉 「ピザトーストなんて作れたの?」

柚月「オムレツも綺麗・・・。」

結芽「まぁね!!冷凍食品に頼れば、こんなの朝飯前よっ!!」

廉 「ですよね。」

柚月「素直に頂きます。」


今の冷凍食品の素晴らしさに感動しつつ、あたしと廉が朝食を取っていた時。『ピンポーン』と家のインターホンが鳴った。


結芽「はいはーい!今開けまーす!!」


結芽さんが返事をしながら玄関へと向かった。


廉 「こんな時間から誰?」

柚月「さぁ・・・。」


時刻はまだ朝の九時過ぎ。

でも、あたしは大体の予想がついていた。


桂太「よぉっ!!久しぶりっ!!」

廉 「桂君っ!?どうしたの!?」

菜緒「おっ?朝食・・・は冷凍か?」

柚月「菜緒さんっ!!

光希「お邪魔しますっ!」

結芽「どうぞーっ!!」


一気に騒がしさが増す松澤家。

特に、何も聞かされていない廉は混乱している様子。


廉 「何したの?」

結芽「廉も柚月ちゃんも、まずはご飯食べちゃって!!」

廉 「俺、もうお腹いっぱい。」

柚月「あたしも。」

結芽「そう。じゃぁ、お茶だけ用意したら始めますか!」

菜緒「あ、あたし差し入れ持って来たから、それ出して?」

結芽「菜緒っ、さっすがぁ!!ありがとう!!」


菜緒さんが持ってきてくれた洋菓子と、結芽さんが淹れてくれたコーヒー。

準備が整ったところで、桂太先生が口を嫌いた。


桂太「実は、光希が来年から一人暮らしを始めるって事で、部屋の整理をしていたんだ。」

菜緒「そうしたら、一枚のDVDが見つかって。」

廉 「DVD?」

光希「本当にごめん。すっかり忘れてて。」

柚月「何のDVDなんですか?」

桂太「光希曰く、『廉が高校に入学したら見せて欲しい』っていう約束だったらしい。」

廉 「それってまさか・・・」


『拓さんからのメッセージDVDなんだ。』


光希さんの言葉に廉が固まる。それと同時に桂太先生と菜緒さんが結芽さんと廉に頭を下げた。


菜緒「ごめんね。遅くなっちゃって。」

桂太「拓が入院してて、俺達三人でお見舞いに行った時、拓が光希にこっそり渡してたらしいんだ。」

光希「申し訳ない。だいぶ遅くなってしまったけど、観て欲しいんだ。」

廉 「父さんからの・・・メッセージ?」


廉が動揺してしまうのも仕方のない事だろう。

世界で一番尊敬していて、今でも一番愛しいている存在の人から送られたメッセージ。

巡り巡って、今日ようやく二人の元へ届いた。


結芽「廉、観れる?」

廉 「当たり前だろ。観るよ。」

柚月「あの・・・、あたしがいてもいいんですか?」

廉 「お前にもちゃんと観て欲しい。」

柚月「分かった。」


手渡されたDVDが機械の中に吸い込まれていく。

そして、テレビの画面が切り替わり、廉に似ている男の人が映し出された。


廉 「父さん・・・。」


廉の目から、一粒の涙が頬をつたった。




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