第119話 剣道経験者からのギブ&テイク
廉 「柚月、なかなか似合ってんじゃん!!」
柚月「こんな事・・・すぐにバレるってばぁ・・・。」
お分かり頂けたであろうか。
・・・そう。あたしと廉は大地君の高校に侵入する為、双子の親から制服を借りたった今からあたし達はこの高校の『男子生徒』になるのだ。
廉 「柚月のヅラ、結構チャラいな(笑)」
柚月「これからどうするの!?」
廉 「大地は二組らしいから、そこに乗り込んで昨日の奴等のプライドを滅多糞にする。」
柚月「だって、席はどうするの?」
廉 「昨日、大地に頼んで俺とお前の分の机、用意してもらってる。」
柚月「凄い下準備・・・。」
バレる確率は非常に高い。その中で、廉が何を考えてるのかが全然読めず、あたしは不安が募る一方。
柚月「あたしは何をすればいいの?」
廉 「柚月は、これ持ってて。」
廉から手渡されたのは、一本の竹刀。
柚月「竹刀で何するすもりっ!?暴力はっ・・・」
廉 「これは最後の砦。身を守る為の防具である。」
柚月「もー・・・あっ、廉!大地君来た!!」
校門の中に隠れたあたし達は、大地君に取り巻く昨日の軍団を早速発見。
廉 「あいつら、朝から大地を使ってんのかよ・・・」
柚月「あんなに沢山の荷物・・・酷い。」
廉 「制服、必要無かったな。」
柚月「え?」
廉 「この場で充分だ。」
そう言った廉は、紙袋の中から束になっている紙を一斉にばらまいた。
空に舞う沢山の紙・・・。思わずキャッチしてしまったあたしは、その紙の内容に固まってしまった。
柚月「・・・何これ。」
廉 「昨日大地から写メ貰って、徹夜で作ってみた!どう?」
昨日の『ボス』的存在の男子生徒が、上半身女性の下着をつけ、公園でブランコに乗りながらタバコを吸っている画像・・・。
柚月「これ、首から下は偽物?」
廉 「タバコ吸ってんのはマジ。下着だけ加工した。」
柚月「凄っ!全然気付かない。」
朝の登校中、沢山の生徒達が宙に舞う紙や、地面に落ちている不思議な紙を手に取り、一気にザワザワと騒ぎ出す。
そして、大地君達も校門のをくぐり中へ入った途端、沢山の生徒達の冷ややかな視線がボスへと向けられた。
生徒「な、なんだっ!?」
廉 「あっ!よぉ!!人間のクズ!!」
生徒「お前昨日のっ・・・!!」
柚月「ねぇ、これって君?随分と変態な事バラされてるけど、大丈夫!?」
生徒が落ちている紙を拾い上げ、目をまん丸にしながら徐々に赤くなっていく顔をあたしと廉はクスクス笑い合った。
生徒「こ、これ何だよっ!?お前の仕業かっ!?」
廉 「えーっ!?なんの事ぉ!?僕も今学校に来たらこの紙が落ちててビックリしちゃった!」
柚月「僕も!!まさか、君に女性癖があっただなんて・・・」
廉 「大地君!!こんな人と一緒にいたら、大地君も変な目で見られちゃうよ!?」
ボスの金魚のフンしていた同級生も、流石にドン引きの表情で次々と校舎の中へと入って行く。そして、他の生徒達も拡散の為だろうか・・・、画像を写メしてみたり、ボス本人に聞こえるように『キモい』『やベー奴じゃん』との台詞を吐き捨てながら去って行く。
生徒「お、お前らここの生徒だったのかよ!?何年何組だ!?」
廉 「俺達はぁ」
柚月「転校生です。でも、用が済んだので転校しまーす。」
生徒「ふざけんなっ!」
ボスがあたしの胸ぐらを掴み、右手の拳を振り上げた瞬間・・・。
廉 「めーーーんっ!!」
元剣道少年の廉が、ボスの額目掛けて竹刀を振り下ろした。
生徒「いってぇ!!」
廉 「いじめにはいじめで返し、暴力には暴力で返す。ま、本当はダメなんだけどね。」
大地「廉君、柚月ちゃん!」
廉 「よぉ大地!!」
柚月「大地君、他に何かして欲しい事、ある!?」
大地「いや、僕はもう・・・」
廉 「え?土下座して欲しい?分かった。」
額に手をあてながら両膝をついているボスに対し、廉が更に追い討ちをかけた。
廉 「おい、お前が大地をいじめる限り、俺達は倍返しでお前を恥さらしにしてやるよ。」
柚月「君、知ってる?いじめって犯罪なんだよ?まぁ、その前に君は本当の友達がいなくて可哀想だね。」
廉 「今、この場で俺達に誓えよ。二度と大地をいじめたりバカにしたりしないって。」
柚月「そのまま両手をついて、大地君に謝罪しながら土下座してよ。」
生徒「何で俺が大地なんかにっ・・・!!」
廉 「まだ懲りてねーの!?もっとやられたいならしてやっけど!?」
柚月「これから毎日大変だね?どんな嫌がらせしようかなぁ!?」
ついに降参。ボスが白旗を挙げた。ボスは大地君に対し『今後二度と近付きません。』『嫌がらせも二度としません。』と言い、小刻みに震えながら土下座をした。
廉 「大地、どうする?」
柚月「許す?それとも、もっとやり返す!?」
大地「もう関わらないでくれるなら、それでいいよ。」
廉 「こいつがまた何かして来たらすぐに言えよ。」
柚月「僕達、仲間だろ?」
その時、またしても校舎から先生達が姿を現した。
廉 「柚月、逃げるぞ!」
柚月「うん!大地君、またねっ!!」
大地「廉君、柚月ちゃん、ありがとうっ!!」
果たして、このやり方が正解なのかなんて分からない。
でも、これで大地君がこれからの学校生活を快適に過ごせるなら・・・。
そう願い、あたし達は猛ダッシュで見知らぬ街を駆け巡った。
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