第118話 悪には正義の『リベンジ』を。
廉 「あ、俺寝てた?」
柚月「疲れたんだよ。ゆっくり寝れた?」
廉 「あいつ・・・、大地どうなったんだろう。」
結芽「まぁまぁ。とりあえず中に入ってから話したら?」
夏の日の夕方。まだまだ空は明るい。
あたしは廉の家にお邪魔し、アイスティーを結芽さんから頂き喉が渇いていた事もあり、一気に飲み干した。
結芽「廉、明日一緒に学校に行くからね。」
廉 「迷惑掛けてすんません。」
柚月「あ!そういえば、廉の携帯鳴ってた。」
廉 「え?」
廉がポケットから携帯を取り出し画面を開く。
廉 「大地からの電話だ。」
柚月「掛けてみたら?」
廉が大地君に電話を掛ける。でも、夕方で忙しいのか、それともまだ学校で先生達と話をしているのか・・・。
電話が繋がる事は無かった。
廉 「あいつ、またうちの高校に戻ってくればいいのに。」
柚月「家庭の事情だもん。そんな訳にいかないよ。」
廉 「海での花火と遊園地が思い出だなんて・・・」
未だに納得していない廉。あたしも、どうすれば廉を宥められるのか解決策が思い浮かばない。
結芽「あの高校に通ってた双子の子供のお母さんと友達なんだけど、いい噂は聞いて無かったなぁ。」
廉 「双子?」
結芽「うん。今年卒業してもういないんだけどね。どっちとも男の子で。」
その話を聞いた途端、廉の目がキラキラと輝き出し『悪ガキ小僧』の表情に切り替わった。
廉 「お母様、柚月。一生に一度の頼みがあるのです。」
柚月「え、何!?」
結芽「・・・何か嫌な予感。」
廉 「そのお母さんと、今連絡取れる?」
結芽「取れるけど・・・何する気!?」
廉 「柚月!」
柚月「何!?」
廉 「『リベンジ』しに行くぞ!!」
柚月「リベンジ!?」
『迷惑掛けた分は出世払いで倍返しします。』
廉の言葉に、結芽さんは何かを悟ったのか溜め息をついた後、双子の母親に連絡を取り出した。
柚月「ねぇ、何考えてるの?」
廉 「すげー楽しい事!!」
柚月「あたしも楽しいの?」
廉 「ある意味楽しいと思うよ。」
何をするのか廉に聞いていた時、大地君から折り返しの電話が来た。
廉 「あ、もしもし大地!?大丈夫だったの?」
電話越しから聞こえてくる微かな大地君の声。
何度も『ごめんね。』と言っているのだけは分かる。
廉 「俺は大丈夫。ところでさぁ、お前何組なの!?頼みがあるんだけどさぁ・・・」
廉が電話をしながらリビングを出て行く。
そして、結芽さんはと言うと・・・。
結芽「本当にごめんね。助かります!!うん、そう。明日の朝校門の前で。」
何を校門の前でなのか?
明日は学校のはず。
何が助かるのか!?
疑問だらけのあたしには到底付いて行けない二人の悪巧み。
混乱しているあたしをよそに、廉が再びリビングへと戻って来た。
廉 「母さん、大丈夫?」
結芽「許可は貰った。明日の朝、校門前で受け渡し 」
廉 「あ、大地!?じゃぁ、さっきの件宜しくね!んじゃね!」
結芽「はぁー・・・。我が息子の悪知恵がここまで成長するとはねぇ・・・。」
柚月「ねぇ、廉。何をするの!?」
廉 「明日になってからのお楽しみ!!」
柚月「結芽さんっ!!教えて下さいっ!!」
結芽「柚月ちゃん、キレるなら息子にキレてね。母は何も悪く無い・・・と思う。」
『明日』何があたしを待ち望んでいるのか。
『明日、いつもより一時間位早く迎えに来て。』
廉の不可解な言動に不安を感じながらも、あたしはこの後廉と解散し自宅へと返った。
そして翌朝。
廉の言う通り、一時間早く迎えに行ったあたしは、結芽さんの車に乗り込み、昨日も来た大地君が在学している高校に到着。
そこで待っていた一人の女性に紙袋を手渡されたあたしは、ようやく今日の『リベンジ』の意図が明確になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます