第117話 大切な仲間の為に・・・。

先生「いじめ!?そんな話は一切耳に入ってきていない!!」

廉 「あんたらが聞く耳持たねーからだろ!?現に大地は大量の鞄もを持たされてっ・・・」

先生「どうであれ、君達余所者には関係のない話だ!!」

柚月「あります。大地君は、あたし達の大切な友達なんです。」

先生「あー、あれか!?友達だからいじめられてるって感情的になったんだろ!?」

廉 「・・・あんた、教師失格だな。免許剥奪されちまえよ。」

先生「なんだとぉっ!?」


一人の体育会系の先生が廉に詰め寄った。・・・その時だった。


大地「僕の大事な友人を傷付けるなっ!!」


大地君が先生の胸ぐらを掴み、廉を自分の背後に隠した。


廉 「大地っ!!お前はやめとけっ!!」

柚月「大地君!!」

大地「僕の唯一の友達なんだっ!!悪く言ったら殴るぞ!」

先生「お!?初日から威勢がいいなぁ!!この件が終わったら指導室に来なさい。」

廉 「・・・にしろよ。」

柚月「廉、お願いだから落ち着い・・・」

廉 「おめーら大概にしろよっ!!」


止められなかった。ずっと隣にいたのに・・・。

廉の衝動を読み取る事が出来なかった。


大地「廉君っ!!」


廉は薄ら笑いをしている先生の服を掴み、抵抗する暇を与える事無く右手を大きく振りかぶり先生の頬を目掛けて振り下ろした。


柚月「廉っ!!」

廉 「おめーら全員目を覚ませ!!いじめがこんなに近くで起こってる事を、ちゃんと自覚しろ!!」

先生「今のは紛れもなく暴力だな!今から警察に連絡する。たっぷりお叱りを受けるといい。」

大地「先生!待ってください。廉君は間違った事なんて何も言ってません!!」

柚月「ここの先生、頭おかしいんじゃないの!?生徒より自分が大事なんて・・・。どうかしてるっ!!」


何を言っても、もう手遅れだった。

一人の先生が警察に電話をし、いかにも『被害者』ぶった根もはもない話を淡々と伝え・・・。

そして、数分後。警察の車が門の前に止まり、三人の警察官が現れた。

警察官に囲まれた廉は、『警察署でゆっくり話を聞く』と言われ、廉も抵抗する事無く、車に乗り込んだ。


柚月「廉っ!!」

先生「君は帰りなさい。それとも、彼と一緒に処分を受けたいのか!?」

柚月「・・・うるせーんだよ。馴れ馴れしく話し掛けんじゃねーよ。」

大地「僕も一緒に乗って行きます。」

先生「君は今から進路指導室で話を聞く。」

柚月「大地君、あたしが一緒に乗っていくから、大丈夫。」


あたしは大地君に『後で連絡する』と伝えた後、すました顔をしている生徒に向け『このままで終わると思わないで。』と言い残し、警察の車に無理矢理乗り込んだ。


車内では、未だ興奮状態の廉に警察官が穏やかに廉をなだめている。そして、ある一人の警察官が廉とあたしにこう言った。


『きっと、君達は何も悪くない。ただ、どうしても話を聞かなければいけない義務がある。それだけ協力して欲しいんだ。』


『俺の息子も、いじめに合って不登校中なんだよ。』


その言葉に、あたしと廉がその警察官の顔を覗き込む。

『君は、友達を守る為に頑張ったんだよな。』

緊張の糸が解けたかの様に廉の頬に涙がつたう。

それに対し、警察官が廉の頭をクシャっとかき乱し、まるでそれは『父親と子供』の様な光景に見えた。


そして、警察署に到着したあたし達は学校名、自宅の住所、年齢を聞かれ結芽さんが迎えに来る事となった。


ようやく落ち着きを取り戻した廉は、警察官に頭を下げながらこう訴えた。


廉 「どうすれば俺は友達を助けられますか?」

警官「君達を見送った後、高校で話を聞く事になる。」


『君の友達が過ごしやすい日々を送れる様に、先生方には厳しく注意をしておくよ』


廉 「それで大地は大丈夫なの?」

警官「きっと、今回の事で、彼も気付いたと思うよ。『もっとしっかりしなきゃいけない』って事を。」


『大丈夫。任せて。警察官は悪を裁く仕事だから!!』


笑顔でそう言ってくれた中年の警察官にあたしと廉は『宜しくお願いします。』と約束の誓いとして握手を交わした。


その後、結芽さんが警察署に到着。

頭を下げる結芽さんに、警察官の人は『立派な息子さんに育ちましたね。』と声をかけてくれた。


そして帰り道。廉は疲れたのか車が発車した途端に眠ってしまい、結芽さんはあたしにこう聞いてきた。


結芽「柚月ちゃん。廉は、ちゃんと友達を守れたの?」

柚月「はい。先生にも楯突いてしまいましたけど・・・」

結芽「アホな先生にはどんどん反抗していいの!!所詮みんな同じ人間。名ばかりの教師なんて必要ないんだから。」

柚月「廉が目を覚ましたら、沢山褒めてあげて下さい。」

結芽「ううん。廉からすれば当たり前の事をしただけなの。だから、あたしは敢えて普通に接してあげるのが母親としての務めかな。」


車内の後部座席で、廉があたしにもたれ掛かる様に爆睡している。そして、廉のデニムのポケットから電話の着信音が鳴り響く。あたしは廉を起こそうか迷ったが、悩んだ末、そのまま廉が自ら目を覚ますまで寝かせてあげる事にした。


そんなこんなで車は廉の家に到着。

車のエンジンを止めたと同時に廉がゆっくりと目を覚ました。



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