第113話 それぞれの道

まこ「楽しかったね!」

光希「楽しい時間はあっという間だなぁ。」

柚月「でも、花火凄く綺麗だった。」

廉 「来年も、またこの4人で来れたらいいな。」


花火大会が終了した帰り道。あたし達は帰り際に買ったかき氷を食べながらゆっくりと歩いていた。


まこ「花火大会が終わるとあっという間に学校になるんだよねー。」

柚月「本当だね。」

光希「来年は三年生だろ?進路とかについても、少しずつ考えて行かないとな。」

廉 「俺、どうしよっかなぁ・・・。」


『進学』『就職』その選択肢によって、来年のクラスがそれぞれ変わってくる。


光希「まこはどうするの!?」

まこ「あたしは美容系の仕事に就きたいから、専門学校かなぁ!?柚月は?」

柚月「あたしはまだ何も決まってないや。」

光希「廉は?」

廉 「俺は保父さんになりたいかも。」


『廉が保父さんっ!?』

一同騒然。

今までの廉の性格を間近で見てきた人ならば、誰もが耳を疑ってしまうだろう。

幼い子供達のお世話をし、共に遊び、悪い事をする子が入れば注意をし・・・。

とても大変な仕事に就きたいと言い出す廉の言葉に、あたし達の頭が中々ついて行かない。


光希「え!?廉が保父さん!?」

廉 「何だよ?別にいーだろ。」

まこ「でも、凄く大変な仕事だよ!?」

廉 「俺、大地の弟と遊んだ時、すげー楽しかったんだよ。」

柚月「でも、楽しい事ばかりじゃないよ!?」

廉 「分かってる。でも、色々と教えてやりたいんだ。」


廉はこう言った。

『今の時代、親に甘えたくても甘えられずに育ってる子供が沢山いると思う。』

『だから、俺はその子供達の父親代わりとして沢山遊んでやりたいんだ。』と・・・。


光希「廉、お前本当に変わったな。」

まこ「凄くいい考えだね・・・。応援する!」

廉 「まぁ、なれるかどうかわかんねーけど。」

柚月「廉ならなれるよ!あたしも、早くやりたい事みつけなきゃ。」


将来を考える年齢になってきた実感がまだ沸かない。でも、廉もまこも、クラスメイトの子達も・・・、きっと少しずつ動き出しているのだろう。

いつまでも子供のままじゃいられない。前を向き、先々の事を考える時期がもう目の前まで来ている。

本当、高校生活なんてあっという間なんだ・・・。


まこ「あ、そういえば大地の事なんだけど。」

廉 「大地?」

まこ「あれ?何も聞いてない?」

柚月「何を!?」


『大地、親の都合で先月引っ越ししたみたいだよ。』


まこの言葉に、あたしと廉が顔を見合せた。


廉 「いつ?」

まこ「詳しくは分かんないけど、先月引っ越したって事だけは知ってる。大地と同じ団地に住んでる子が言ってた。」

柚月「だって、先月遊びに誘われて・・・」


そうか。

『お似合いのカップルなんだから、ずっと幸せでいてよね。』

『廉君、柚月ちゃん、お幸せに!!』

そういう事だったんだ・・・。

大地君にとっては、あれがあたしと廉への『サヨナラ』の合図だったんだ。

何となく不自然だったのは気付いていたのに、読み取ってあげる事が出来なかった。

友達として、最低だ・・・。


廉 「何処に引っ越したの?」

まこ「そこまではあたしも分かんないよ。」

光希「先生なら分かるはずだぞ。ただ、プライバシーの保護があるから教えてくれるかどうかは分からないけど・・・。」

柚月「廉、明日先生に聞きに行こうよ。」

廉 「あぁ。夏休み中にあいつに会って説教してやる。」


そんな話をしながら、あたし達は解散。

『楽しい思い出』をくれた大地君に、今度はあたしと廉が恩返しをする番・・・。


廉 「明日、学校行くぞ。」

柚月「うん。朝、迎えに行くね。」

廉 「・・・あいつ、かっこつけやがって。」


そして翌朝。

廉を迎えに行き、合流したあたし達は夏休み中の学校へと向かった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る