第101話 彼の意思と共に。
光希「彼は余命宣告をされ、自暴自棄にもなりました。目の前が真っ暗になり、夢も希望も閉ざされ。僕は彼の口から何度も「今すぐ死にたい」という言葉を聞きました。」
あたしの前で、一度だけ弱音を吐いた譲さん。きっとあの日の様に「生と死」も狭間で生きていた譲さんにとっては、みんなが幸せそうに見え、楽しそうにしている人達を妬み・・・、でもそんな自分が許せなくて。
息苦しい日々を送っていたに違いない。
光希「生きたいのに生きれない。みんなが書いてくれた様に、何気ない暮らしの中で戸惑いを抱えながら、それでも必死に生活している人が圧倒的に多いと思う。むしろ「毎日が楽しくて仕方がない」なんて思える人の方が少ないんじゃないかな?」
廉「光希先生はどうなの?毎日楽しいの?」
薄暗い教室な中で、廉の声が聞こえた。
きっと、廉は「光希君」としてではなく「光希先生」の立場としての意見が聞きたいのだろう。
最後の授業だからこそ、みんなに教えて欲しい。
「実習生」から「教師」に変わってしまえば、多少なりとも拘束されてしまう事が出てくるだろう。
今だからこそ聞ける発言。
廉は、譲さんに変わって光希さんの背中を押してあげた様な気がした。
光希「僕は中学三年の時、酷いいじめを受けました。」
柚月「え?」
光希「理由は、ある一人の生徒がいじめにあっていて、周りから「お前も無視しろ」という誘いに断ったからです。
廉 「ひでぇな。」
光希「いじめを受けていた生徒と僕は友達でした。だから、僕はいじめを受けていようが友達として接していました。でも・・・」
光希さんが断った翌日から、いじめのターゲットは光希さんに変わってしまった。そして、何よりも悲しかったのは、いじめられていた友達も光希さんを裏切り、無視し始めた事・・・。
いじめという辛さを味わっていても、ずっとそばで寄り添ってくれていた光希さんを見捨て、己の身を守る。
光希さんは「ここで休んでしまったら負け」と思い、めげずに毎日学校に通い、どんな酷い仕打ちをされようが卒業までの期間を「めげない気持ち」で過ごしたらしい。
柚月「そこまでされて、人間不信にならなかったんですか?」
光希「勿論なったよ。高校に入って新しい友達が出来ても深く関わるのが怖くて。そして、思ったんだ。」
『人の私生活をやたらと聞いて来る人ほど、一番信用しちゃいけない』
廉 「でも、どうして亡くなったか彼とは信頼関係が築けたんですか?」
大地「どうやったら廉君に信頼してもらえるんですか?」
廉 「お前とは一生無理。黙ってろ。」
大地「あらま。」
柚月「ちょっと、真剣に授業受けてもらっていい?(笑)」
光希「塞がった心を簡単に開く事って、難しいと思うんだ。でも、彼は今までの友達とが全然違うタイプで・・・」
『最初から僕の心の中を見抜いていたんだ。』
光希さんはそう言い、譲さんとの出逢いを話してくれた。
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