第96話 三大欲求

まこ「おはよう!」

柚月「おはよ、まこ。」

まこ「あれ?廉君は?」

柚月「今来ます(笑)


廊下から、何やら激しい論争が徐々に大きく聞こえてくる。


廉 「だから、何でお前に俺の息子を見せなきゃなんねぇの!?」

大地「だってショックなんでしょ?「ちっさ」って言われた事が。」

廉 「別に?俺の息子は優秀だから、デカくなろうとすれば無限に膨らむんだよ!!

大地「風船じゃん(笑)」

まこ「・・・何の話?」

柚月「廉のプライドの話(笑)」


朝、あたしと廉は登校中にばったり大地君と遭遇。

前ほどの廉へ対する強引さは消えたものの、「憧れ」は未だ健在の様で、今度は「廉君の様な男になりたい」と言い出す始末。


大地「ねぇ、ブスは廉君の見た事あるの?」

柚月「またブスに戻ったのね。ま、別にもういいけど。」

まこ「ねぇ、柚月。光希の実習もあと一週間で終わりだね。」

柚月「あっという間だね。でみも、生徒からも人気あるし、順調だね。」

まこ「今は見守ることしか出来ないけど、頑張ってほしいな。」

柚月「光希さんなら大丈夫だよ。行動や言動に迷いを感じないもん。」


残り一週間。

光希さんは本当に頑張っていた。

中には、実習生で若い事を理由にからかう生徒や真面目に授業に参加しない生徒、それに注意をすればたてついて威嚇する生徒・・・。

あたしのクラスはまだ穏やかな方で、まこのクラスの男子が光希さんの言う事に耳を貸さず、本当に大変な状態らしい。

それでも光希さんは慌てる事なく、かと言って放置をする訳でもなく・・・、きちんと向き合い、話し合い「今すべき事」を生徒が納得行くように教える・・・。


とても大変な事であり、とても大事な事を光希さんはこの短期間でしっかりと、そして真剣に指導していた。


廉 「おい、柚月!!」

柚月「何?」

廉 「俺は小さいのか?」

柚月「な、何言ってんの!?見た事ないのに分かる訳ないでしょ?」

大地「え?」

まこ「はぁ!?」


『まだしてないの!?』


大地君とまこが奏でるハーモニー。

・・・でも、何となく大地君に言われるのは癪に触る。


廉 「いや?毎日ガッツリでヘトヘトだよな?」

柚月「いらぬ見栄を張るでない。」

大地「小さいから恥ずかしくて出来ないの?(笑)」

まこ「ぶっ!!(笑)衝撃な内容っ!!」

柚月「ちょっと、まだ朝ですけど。」

廉 「あっそう。じゃぁ大地、お前はもう済ませてんだな?そうなんだな?」

大地「うん。去年の末に。まぁ、他校の女子でそれだけの関係で終わったけど。」

柚月「嘘でしょっ!?夢じゃなくて!?」

廉 「あれ、耳の調子が・・・え?何?聞こえない。」

まこ「柚月。廉君がどんなに小さかろうが平気でしょ?」

廉 「おい、誰かガムテープ持ってこい。」


人間の三大欲求。

「食欲」「睡眠欲」「性欲」

お腹は空く。眠くもなる。ムラムラはしない。


・・・ムラムラって何?


柚月「あたし、おかしいのかな?」

まこ「普通は男の子がリードしてくれるんだけどねー。」

廉 「大地、ちょいちょい。」

大地「何?」

廉 「やっぱ初めてって痛いの?」

大地「いや(笑)痛いのは女の子だと・・・。」

廉 「はーい。クラスのみんな、俺に注目してー!!」

まこ「嫌な予感(笑)」

柚月「な、何っ!?」

廉 「決めました!!今、ここで誓います!!」


『俺は今日、古川柚月さんとエッチな行為をします!!』


要らぬ宣言。

余計な報告。

やはり廉は変わってしまった。

・・・バカになってしまったらしい。


柚月「はぁっ!?ちょっと、みんな嘘だからね!!しないから!!」

廉 「柚月。」

柚月「何っ!?」

廉「この雰囲気の波に乗りながら、俺の上に乗るが良い。」

柚月「ねぇ、誰かガムテープ持って来て。」


この後、学校が終わり廉の家にお邪魔する事になったあたしは、ことの顛末を結芽さんに報告したが、さすがは親子。

嬉しそうに「装備品」をドラッグストアに買いに出かけた。

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