第95話 本当の友達

柚月「ここかな?」

廉 「多分・・・、でもさ、よく考えてみると突然行くのもおかしくない?」

柚月「どうして?「心配してた」って普通に言えば済む事でしょ?」

廉 「いや、ここまあくまでも慎重に・・・」

柚月「あ、あれ!!あそこの公園にいるの、大地君じゃない?」


とある集合団地の一角にある、小さな公園。

そこには、小さい子供と戯れている大地君らしき面影を見つけた。


廉 「図体デケェな。あれは大地だ。」

柚月「行こうよ。」

廉 「え?何で!?」

柚月「何でって(笑)一体何の為に来たの?」

廉「なんかさ、「いかにも」って感じじゃなくて、さりげなく行きたくない?」

柚月「例えば?」

廉 「・・・いい事思いついた。」


監督、演出・松澤廉

キャスト・松澤廉・古川柚月


タイトル

『夕暮れの団地妻井戸端会議』


柚月「ねぇねぇ、最近学校に来てない大地君って知ってる?」

廉 「知ってる知ってる!やけに図体だけでかい子でしょ?」

柚月「そうそう!!「ブス」と「廉君」が口癖の人!!」

大地「・・・あれ?廉・・・君?」

廉 「その大地君、最近学校に来てないみたいだよ?」

柚月「何かあったのかしら?」

大地「あ、あの・・・」

廉 「その噂の大地君って、この団地に住んでるって噂じゃない?」

柚月「そうなの?世間って狭いわねぇ。」

廉 「子供の頃に戻った気持ちで、一件ずつピンポンダッシュでもしようかしら。」

柚月「あら、何をほざいてるの?このアホ・・・」

大地「あのっ!!こんな所で何してるの!?」

柚月「あれ?大地君?」

廉 「よぉ、大地。お前何してんだ?」

大地「それはこっちの台詞なんだけど・・・。」


とてつもなく時間の無駄なコントが無事終了。

良くも悪くも、廉はご満悦な様子で何より。自然な流れ・・・とは言い難いが、とにかく大地君があたし達に気付いてくれて一安心。


それと共に、あたしは元祖団地妻の冷ややかな視線がとても怖かった。


大地「本当に何してたの?」

廉 「演劇の練習。」

大地「廉君、何部だっけ?」

廉 「デ部。」

柚月「帰宅部です。」

大地「・・・もしかして、わざわざ来てくれたの?」

廉 「大地。」

大地「え?あ、何?」

廉 「一緒に遊んでた子供、あれお前の弟?何歳?名前は?」

大地「七歳、名前はもとき・・・。」

廉 「まさにうんこが好きな年齢だな。」

柚月「何基準なのよ。」

廉 「おらぁ!もとき!!ズボン脱げーっ!!」


廉がもとき君のもとへ走り出す。


大地「あのさ、ブス。」

柚月「そこはブスのままなのね。」

大地「その・・・、今まで迷惑かけてご・・・」

柚月「あたしも廉も「ごめんなさい」が聞きたくて来たんじゃないの。心配だったから様子を見に来ただけ。」

廉 「大地!!お前の弟俺の背中に砂入れて来やがった!!」


さすが兄弟。七歳とは思えない体格に、廉は逆にズボンを剥ぎ取られそうになっている。


柚月「楽しそう(笑)あたしも混ざろうかな?」

大地「廉君、怒ってないかな?」

柚月「逆だよ。」

大地「逆?」

柚月「ねぇ大地君、あたし廉と二つの約束をしない?」

大地「約束?」

柚月「そう。一つ目はちゃんと明日から学校に来る事。そして、もう一つは・・・」


『これからも、ずっと友達でいる事』


無理に焦らず、無理に着飾らず。

ありのままの大地君でいい。

人と会話をするのが得意じゃない。

友達作りが時じゃない。

一人でいるのが好き。


どれも全て「個性」だと思う。


いくら愛想が良くても、どんなに喋りが得意でも、

それで人をけなす人もいる。

友達が沢山いたって、本当にピンチの時に助けてくれる仲間は何人いる?

群れをなして行動するより、一人で行動できるなんて、それこそ大人なんじゃないかとあたしは思う。


柚月「マイナスをプラスに。少しづつでいいから本当の大地君と友達になりたいな。」

大地「古川さん・・・。」

廉 「ちょっとーっ!?このガキ、俺の息子見て「ちっさ!!」って言ったからゲンコツしていい?」

大地「ゲンコツはダメ!!こら、もとき!!素直過ぎるのもダメなんだぞ!!」

柚月「・・・ちっさいんだ(笑)」


この日、日が暮れるまで廉は泥だらけになりながら遊び倒した。


『また明日、学校で。』


大地君自ら言ってくれた答えに、あたしと廉は自然と顔が綻び、とても嬉しかった。









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