第63話 それぞれの想い
結芽「ただいま我が家っ!!」
まこ「結芽さん、今日はありがとうございました。」
結芽「いいえ!どういたましてっ!!」
光希「じゃぁ、俺とまこはこの辺で・・・。」
柚月「ちょっと待って、みんな。」
今日はとても楽しかった。
沢山笑って、廉の意外な一面も見れて。凄く幸せな一日だった。
そんな一日を送れたのは、他でもないみんなのおかげ。
みんなが、あたしを笑顔にしてくれた・・・。
柚月「今日は、本当にありがとう。」
まこ「・・・柚月、お礼を言わなきゃいけないのはあたしの方。」
柚月「え?」
光希「俺からも。まこを助けてくれてありがとう、柚月ちゃん。」
柚月「光希さん・・・。」
「人は一人では生きていけない」
よく聞く言葉。
中には「自分一人でも生きている」って、そう答える人もいると思う。
そして、それを「孤独」と勘違いしてしまう・・・。
廉 「俺も。」
柚月「廉も?何を?」
廉 「桂君から全部聞いたよ。父さんの事。」
結芽「『拓と桂太君だけの約束』。桂太君は、拓のわがままな約束をちゃんと最期まで守ろうとしてくれていたのね。」
廉 「柚月、お前知ってたんだろ?」
柚月「・・・うん。」
廉 「一人で全部背負いこみやがって。それなのに、お前はこんな俺を支えようとしてくれた。」
結芽「勝手に勘違いして、桂太君や菜緒と距離を取って。本当、あたしはバカだった。拓のわがままに振り回されていただけなのに・・・。でも、良かった。あの人は・・・」
『拓は、最期までみんなから愛されて幸せだったのね。』
涙で声を詰まらせる結芽さんに感染し、あたしまで目頭が熱くなってしまう。
今、「孤独感」に襲われている人に伝えたい。
左胸から感じる鼓動・・・。
それは、君が君のお母さんのお腹に宿った瞬間から今日までずっと。一日も休む事なく静かに動き続けている音・・・。
楽しい時も、悲しい時も、そして辛い時も。
そんな時だって休む事なく、君と一緒に時を刻んでいるという事を。
『君は決して一人じゃない』という事を・・・。
廉 「柚月、ありがとう。」
柚月「あたしは、何もしてあげれてないの。」
まこ「ううん、それは違うよ。」
柚月「え?」
光希「柚月ちゃんが、自分を犠牲にして。」
廉 「俺達をちゃんとここまで導いてくれた。」
結芽「みんな、柚月ちゃんに感謝の気持ちでいっぱいなんだよ!!」
柚月「ありがとう・・・ございます。」
こんなあたしでも、誰かの役に立てている。
「人生苦あれば楽あり」
本当にそう思う。・・・でも、それでもいい。
ううん、違う。
「そうやってみんな生きて行くんだ」
光希「後は、廉がもっとしっかりしないとな。」
廉 「余計なお世話!先輩面すんな。」
結芽「いい雰囲気だし、これからドライブに行かない!?」
満場一致での「行かない」。
この後、結芽さんに恐れを成したあたし達はすぐに解散した。
次の日、学校へ行くと「一身上の都合」との理由で桂太先生が居なくなった事を、あたし達は学年主任から聞かされた。そして、何故か不思議とりかと顔を合わせる事もなく、穏やかな生活を取り戻し始めたあたし達。
季節は人肌が恋しくなる冬。
十二月を迎えていた。
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