第64話 恋と友情の天秤

まこ「ねぇ、柚月!」

柚月「何?」


学校はあっという間に冬休みへと突入。

あたしはまこに付き合わされ、週に二回は光希さんのバイト先に訪れる日々を送っていた。


まこ「せっかくのクリスマスだったのに、なんで二人でデートしなかったの?」

柚月「え、だって別に廉とはいつでも会えるし・・・。」


年に一度のクリスマス。

カップルにとっては、まさに一大イベント。

でも、あたしは廉の家で結芽さんと三人、仲良く市販のケーキを食べたりテレビを観たり・・・。

まったりと過ごして終わった。


まこ「柚月はさ、もっと廉君と恋人らしい事したいとか思わないの?」

柚月「恋人らしいって・・・例えば?」

まこ「手を繋いでイルミネーション見たり、お泊まりしたり。」

柚月「イルミネーションならテレビで観たし、クリスマスの日は廉の家にお泊まりしたよ?」

まこ「んもーっ!!そうじゃなくて!!廉君ももう少しグイグイって・・・」

光希「こら、まこ。柚月ちゃんを急かすなよ。」

まこ「光希!」

柚月「・・・いつの間に呼び捨てになったんだ?」


実は、光希さんに聞きたい事があった。

ずっとずっと、気になっていた事・・・。


柚月「あの、光希さ・・・」

光希「柚月ちゃん。」

柚月「あ、はい。」

光希「柚月ちゃんと廉は、焦らずゆっくりでいいと思うよ。」

まこ「でも、全然カップルらしい事してないんだよ!?友達以上恋人未満って思われてもおかしくな・・・」

光希「まこはいいのっ!!ただ優しく見守る事も、親友としての役割だと思うけど?」

まこ「・・・トイレ行ってくる。」

柚月「あ、まこっ!光希さん、まこはあたしの為に言ってくれただけで・・・」

光希「知ってるよ(笑)まこには申し訳ないけど、わざとこう仕向けたんだ。」

柚月「仕向けた?」


「最近、譲の容体があまり良くない」

聞こうと思っていた矢先での、嫌な情報だった。


あれからも、時々メールのやり取りは続いていた。

でも、ここ最近になってメールの返信が無い。心配はしていたものの学校があり、ましてやまこには内緒の中でお見舞いに行くのはなかなか難しく・・・

「冬休みに入った今なら」

そう持っていた矢先だった。


柚月「譲さんに会いに行きたいんです。」

光希「うん、俺も柚月ちゃんに譲を合わせたいと思ってる。・・・ただ、もう一つ問題が出て来たんだ。」

柚月「問題?」

光希「譲の生みの親が「譲に会いたい」って、育ての親に行って来たみたいなんだ。」

柚月「譲さんの?でも、どうして今更?」

光希「理由は分からない。でも今の譲は会いに行ける状況じゃない。だから、俺が代わりに・・・」

柚月「あたしも行きます。一緒に行かせて下さい。」

光希「でも、場所が少し遠いんだよ。」

柚月「冬休み中だし大丈夫です。連れてって下さい。譲さんにとって、何か良い情報が分かるかもしれません。」


『分かった』

光希さんからの許可が下りた。

あたしは、譲さんの「生みの親」に会いに行く。

どんな人なのか・・・、どうして譲さんを手放したのか。

譲さんの代わりに聞きたい。


この後、まこがトイレから戻って来た為話は中断。まだ不貞腐れているまこの小言を聞く羽目になったあたしは、「はいはい」とただひたすら頷く動作が暫く続き・・・。

そして、店を出ようとなったあたし達はレジへと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る