第59話 嬉し楽しい地獄のドライブ

光希「れ、廉・・・。」

廉 「分かってる。」

まこ「廉君、あたしも無理・・・。」

廉 「だろうな。柚月、袋二枚。」

柚月「う、うん。」


乗車してから三十分。

予想通り、二人の犠牲者が出てしまった。

なんてこと無い平坦な道路・・・のはず。

でも、あたし達四人の頭は、もげる寸前の勢いで揺れに揺れまくっていた。

・・・そう、つまり「結芽さんは運転が物凄く下手くそ」であった。


結芽「ねぇ!しりとりしない?」

廉 「誰かさんの運転の荒さでそんな元気ねぇよ。」

光希「いや、廉。ここは気分転換にやろう。」

まこ「結芽さん、その前に窓全開にしてください・・・。」


酸素が薄い。

普通なら楽しいはずの車内が、もはや罰ゲームと化している。

配置としては、助手席に廉。後部座席には真ん中に光希さん、その両隣にあたしとまこが座っている。

あたしから見えるまこと光希さんの表情は、まさしく「地獄絵図」・・・。


結芽「窓全開ね!了解!」

廉 「・・・ワイパー動かしてどうすんだよ。」

結芽「よし!じゃぁ、しりとり始めまーす!」

まこ「廉君、結芽さんっていつもこんな感じなの?」

廉 「物心ついた時からずっとこうだ。」


きっと・・・、いや。かなりの高確率で結芽さん以外の全員が胸の内に秘めている事。

「いいから運転に集中して欲しい」

でも、今のルンルンな結芽さんに言ったところで、全てギャグとなって跳ね返って来るに違いない。


結芽「誰から行きます!?」

廉 「普通は言い出しっぺだろ。」

結芽「じゃぁ、あたしからね!!おっぱいの「い」!!」

まこ「初っ端から下ネタ・・・。」

廉 「下ネタ大好き母親なんです。」

結芽「はい次!廉!「い」だよ!」

廉 「猪木。」

結芽「元気ですかーっ!!」

光希「おいまこ、どうなってんだ(笑)」

まこ「あたしに聞かないで(笑)」

廉 「光希君、「き」。」

光希「き?」

廉 「期待してるぞ。」

光希「・・・キンタマ。」

結芽「たーんたーんたーぬきーのきーんた・・・」

光希「廉・・・、お前も色々と大変だな。」


しりとりと言うよりも、結芽さんのオンステージになりつつあるこのゲーム。

誰もが「もう終わりにしよう」と言う言葉を待っているが、結芽さんの異常なテンションに半ば強制的に続行せねばならない雰囲気。


まこ「次、あたしね。「ま」でしょ?マット!はい、柚月!」

柚月「「と」?常夏!次、「つ」・・・」

廉 「着いた。降りるぞ。」

柚月「え?」


今まで屍のようになっていたまこと光希さんの表情が途端に笑顔へと変わる。


柚月「ここ・・・?」

まこ「そう、ここ!久しぶりーっ!!」

結芽「行ってらっしゃい!思う存分楽しんできてね!」


結芽さんがいなくなり、あたし達四人が降りた場所・・・。

そこは、平日ガラガラ遊園地だった。



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