第60話 苦手なもの

柚月「遊園地だ・・・。」

光希「楽しむぞーっ!!まこ、どれから乗る!?」

まこ「やっぱりジェットコースターでしょ!!ね?柚月!」

柚月「あたしは別に構わないけど・・・。」

廉 「俺、絶叫系無理。」


『嘘でしょ?』

一同唖然。

いつもクールで大概無表情。そして、何事にも物怖じしない廉が・・・。

「絶叫シリーズ苦手」

これはまさに・・・「チャンス到来」


廉 「おい、柚月。」

柚月「・・・はい。」

廉 「俺、さっき絶叫系は苦手だって確か言ったよな?」

柚月「言った・・・かな?」


あたしの隣には引きつった顔をした廉。そして、あたし達の前にはまこと光希さん。

「一番後ろの席が楽しいらしいよ!」

光希さんの粋な計らいで、あたしと廉は一番後ろ。

廉のあたしに対する視線がとても痛い・・・。


光希「廉!こんなの一瞬だって!!」

まこ「そうそう!今日は全制覇するんだから!」

廉 「・・・うよな?」

柚月「え?何?」

廉 「降りるの、まだ間に合うよな!?」

柚月「え?今更無理だよ!!」

廉 「店員さんっ!!俺っ、降りた・・・」


「それでは、発車しまーす!!」

時、既に遅し。ガタンガタンと坂を登り、見渡す景色は絶景。そして。

間も無くジェットコースターは頂上へ・・・。


柚月「れ、廉!?ちょっと大丈夫!?」

廉 「陣内と光希君の野郎っ!!後で見て・・・」


『うぎゃぁぁぁぁーっ!!』

あたし、呆然。まこと光希さん、大爆笑。

あたしの隣で白目を向いている人は・・・誰?

おかしい。実におかしい。


「廉はどこいった?」


まこ「楽しかったね!廉君!」

光希「てっぺんから落ちる瞬間が最高!な?廉(笑)」

柚月「あの・・・廉?」

廉 「お前らなんか、大っ嫌いだ・・・。」


乱れまくった髪。騒ぎ過ぎて疲れきった顔。

・・・そして涙目。

普段、絶対に見ることが出来ない廉の意外な一面を「可愛い」と思えてしまったあたし。


まこ「次はどうする?」

廉 「勝手に行ってこい。馬鹿どもが。」

光希「ダメだね。はい、次は海賊船!」

廉 「ふざけんなっ!俺になんの恨みがあるんだよ!!」

光希「廉ちゃんの可愛い姿が見たいだけ!柚月ちゃんも見たいでしょ?」


げっそりとしている廉を可哀想と思う反面、もっと色んな廉が見たいと思う自分がいる。

廉には申し訳ないけど、凄く楽しい。

今日だけは、何もかも忘れて楽しみたい。遊びまくりたい。


廉 「絶対に嫌だね、乗らない。」

柚月「ねぇ、廉。」

廉 「何だよ?乗らねぇぞ、俺は。」

柚月「コーヒーカップなら大丈夫でしょ?一緒に乗ろう?」

廉 「・・・まぁ、それならいいけど。」

まこ「柚月、分かってるよね?」

柚月「あ、バレてた?(笑)」


コーヒーカップに乗ったあたしと廉。

動いた瞬間、あたしは計画通りハンドルをグルグル回す。

吹っ飛んでいきそうな廉を見て、まこと光希さんがお腹を抱えて笑っている。

そして、その後も休む事なくあたし達は廉を引きづりながら乗り物を次々制覇していき・・・。


最後の乗り物。

観覧車にまこと光希さん、あたしと廉のそれぞれが分かれて乗った。


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