第47話 水掛け論

柚月「こ、光希さんのお父さんが桂太先生っ!?」

廉 「知らなかったのかよ(笑)」

柚月「て事は、桂太先生の子供が光希さんて事!?」

廉 「完全テンパってんな、こいつ。」

光希「まぁ、とりあえず料理来るまで落ち着かせといて(笑)頼むぞ、廉。」


いつの間にかオーダーを取り終えていた事すら記憶にない程、あたしの頭ははてなマークの渦巻状態。

廉は、そんなあたしをチラッと見た後ニヤリと笑い、背伸びをしながらこう言った。


廉 「それにしても、陣内と光希君がねぇ・・・。」

柚月「はっ!!ではまこと光希望さんが結婚したら、桂太先生はまこの義理のお父様になるって事なのですね!?」

廉 「水飲め、水。」

柚月「何てこった・・・。」

廉 「何がだよ。」

柚月「廉、地球は広いのに、世間は狭いのね。」

廉 「光希君ーっ!!こいつ狂ったー。」


廉のSOSコールに、エプロンを外した光希さんが料理を手にしながら再び登場。

あたしの顔を見て苦笑いをし、廉の隣に腰を下ろした。


光希「ちょうど休憩なんだ、俺も混ぜてよ。」

廉 「光希君のせいで、こいつの頭余計にバカになっちゃったじゃん。」

光希「まこには話してたんだけどなぁ。・・・あ、柚月ちゃん不登校してたから話す機会が無かったのかも。」

柚月「え。まこ知ってたんですか?」

光希「どちらにしろ、俺の親父が君らの先生でも、何の問題もないでしょ?」

柚月「えー・・・、なんか変な目で見ちゃう。」

廉 「どんな目だよ。」

光希「まぁ、これからも宜しくね、柚月ちゃん!」

廉 「それはダメだね。」


廉の言葉に、あたしと光希さんが同じタイミングで廉の顔を覗き込む。


柚月「何がダメなの?」

廉 「花火大会。光希君といたもう一人の奴、誰?」

光希「なんだ、お前も来てたのか。あいつは・・・」

柚月「あたしの友達!とても大切な友達なの!!」

光希「柚月ちゃん・・・。」

廉 「随分仲良さそうだったけど?」

柚月「へぇー、あたしがいたの、知ってたんだ!?そんな事言うなら、廉だってあの子と仲良く花火見てたじゃん!!」

廉 「仲良くなんてしてねぇよ。勝手に寄って来たんだろ。」

柚月「嫌なら離れればよかったでしょ?どうせ「廉君、花火綺麗ね」「いや、君に向けてたーまやーだよ」とか、訳わかんないの言ってたんでしょ?」

光希「柚月ちゃんって、発想が豊かだね(笑)」

廉 「あっそう。じゃぁ、男に肩を貸してたお前はどうな・・・」

光希「ぶっ(笑)あははははっ!!」


突然、声高らかに笑い出す光希さん。

あたしは瞬きの回数が増え、廉はというと太々しい態度をあからさまにとっている。

ずっと引きずったまま、放置していた花火大会。

それから色々な事があって、忘れかけていたのは確か。そんな中、あの子の言葉にカッとなって手をあげて。自己嫌悪に落ちていたところでのこのタイミング。

そして、思いもよらぬ発言のやり取りに、あたしは耳を疑った。


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