第46話 奇想天外

廉 「さて、何にすっかな」

柚月「お昼ごはん、食べなかったの?」

廉 「・・・よし、決めた。」

柚月「人の話、聞こえていない様で・・・。」


昼時が過ぎ、店内も殺風景に感じられる中、廉の呼び出し音が響き渡る。


廉 「そう言えば、お前何でここでバイトしてたの?」

柚月「何でって・・・、社会勉強?」

廉 「ふーん。じゃぁ、花火大会も?」

柚月「え?」


「お待たせいたしました。」

廉の言葉に固まっていた時、オーダーを聞きに来た店員でハッと我に返ったあたしは、顔を上げ・・・そして固まった。


柚月「光希さん!!」

光希「やっぱり。柚月ちゃんだと思ったんだよね。何?サボり?」

柚月「違います!!廉が、お腹空いたって無理矢理・・・」

光希「廉?」

廉 「・・・あ。」


光希さんと廉が互いに見つめ合い、何とも言えない微妙な雰囲気が流れる。


柚月「何これ。恋の始まり?」

光希「うわ、すげぇ久しぶり!!全然分かんなかったよ。元気だったか?」

廉 「光希君じゃん。いつからここで働いてんの?」

光希「随分前からだよ。何だお前、イケメンになりやがって(笑)

柚月「どういう事!?」


二人の会話のやり取りに全くついていけないあたしは、廉と光希さんの顔を交互に見る事しか出来ない。


光希「なるほど(笑)」

廉 「何だよ。」

光希「まこから聞いてた、柚月ちゃんの悩みの原因はお前だったのか。」

柚月「ちょっと光希さんっ!!」

廉 「陣内?・・・えーっ!!光希君、あんな気の強い女と付き合ってんの!?」

柚月「・・・廉、失礼だよ。」


仲が良いのか悪いのか。どちらにせよ、この二人の関係がいまいち良く理解できない。

でも、廉の表情がどことなく和んでいるのは確か・・・。


廉 「名指しでクレーム書いておくわ。セクハラされたって。」

光希「あっそ。じゃぁ俺は親父にサボってた事話しとくわ。」

柚月「親父・・・?」

光希「あれ、柚月ちゃん知らなかった?っていうか、まこから聞いてなかった?」

廉 「柚月、こいつの親父は・・・」


光希さんの苗字・・・。


『中山』


て事は・・・!!


柚月「け、けけけけ」

廉 「落ち着け。」

光希「さて、ご注文は?」

柚月「嘘でしょーっ!?」


「中山桂太」と「中山光希」。

親子だと初めて知ったある日の午後。

季節は秋だというのに、あたし一人だけが暑かった。



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