第44話 言い掛かり

桂太「古川!!」

柚月「あ、桂太先生。」


突然、廊下から名前を呼ばれ、振り向いた先には懐かしく思えてしまう桂太先生の姿があった。


桂太「ちょっといいか?その・・・、古川だけ。」

柚月「え?」

まこ「ただの心配・・・って訳じゃなさそうだね。」


桂太先生に手招きをされ、まこを教室に残しあたし一人が廊下に出ると、桂太先生の背後に隠れる様に一人の女の子がいた。


柚月(あれ?この子、もしかして・・・。)

桂太「古川、まずは話を聞いて欲しいんだけど・・・。」

柚月「何ですか?」

桂太「この子が、その・・・、陣内に嫌がらせをされてるって言うんだ。」

柚月「・・・まこに?例えば、どんな嫌がらせですか?あたし、今日学校に来たばかりで・・・」

桂太「それは俺も分かってる。ただ・・・」

まこ「誰が嫌がらせしてるって?」

柚月「まこっ!!」

まこ「いつ?どこで?どんな嫌がらせをあたしがしたの?」


とてつもなく険悪なムード炸裂。

気の強いまこに直接聞かずに、ワンクッション置いてあたしを呼んだ桂太先生の気持ちがよく分かった。


桂太「いや、あのな陣内。お前がそういう事しないのは、俺も分かってる。」

まこ「あんた、廉君の金魚のフンしてる子だよね?始業式に階段の所で話した以外、あんたと会話なんて一切してないはずだけど?」

桂太「古川・・・。」


色恋沙汰に先生までをも巻き込んでしまうこの女の子。

一見、桂太先生の後ろに隠れてオドオドしている様に見えるものの、花火大会での積極的な行動や、始業式での様子を見る限り、お世辞にもおしとやかで泣き寝入りする系とは思えない。

むしろ、何かを企んでいて、計算高いのではないかとあたしには感じ取れる。

きっと、この子はあたしとまこを悪者に仕立て上げて、何が何でも廉を・・・。


柚月「桂太先生。」

桂太「何?」

柚月「まこは何も悪い事、していないと思います。学校に来ていなかったあたしが言っても説得力がない気もしれないけど、まこは弱いものいじめは絶対にする様な子じゃありません。」

桂太「そうだよな・・・。」

まこ「あのさぁ、言いたい事あるなら直接言えば?貴重な昼休み、あんたのせいで丸潰れなんだけどっ!!」

柚月「まこ、少し落ち着いて。」

まこ「猫被ってないで、何か反論すれば??」

桂太「困ったな・・・。ここで廉を呼んだら、余計に紛らわしくな・・・」


「これ以上、廉君を困らせないで!!」

そうハッキリと。むしろ、睨みを利かせた表情であたしの目を見ながらその子はそう言い、そして。


『あんたなんか消えればいいのに』


ついに本性を剥き出しにしたこの子は、鼻で笑いながら本音を吐き出した。


まこ「ほらね、桂太先生分かった?」

柚月「・・・て言った?」

桂太「古川?」

柚月「今、何て言ったって聞いてんのよっ!!」


この言葉が放たれたと同時位だっただろうか・・・。

あたしは彼女の頬をめがけて右手を振り上げた。

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