第43話 遅れた新学期

まこ「え!嘘っ、本物!?」

柚月「あのぉ・・・、今までLINEを・・・ふがっ!!」

まこ「良かったぁ!!生きてたんだね!!本当に良かった!!」


懐かしく思えてしまう光景。

あたしが教室に足を踏み入れた瞬間、まこが猛ダッシュで抱き付いて来た。

他のクラスメイトからも、何が合ったのかと散々聞かれたが、あたしは笑って誤魔化しながら自分の席へと座った。


教室に入ってから、ずっと視線を感じていた相手・・・。廉に対しては、敢えて目を合わせる事をせず、自分なりのペースを保とうと努力した。

そして、何事もなく授業は進み、あっという間に昼休み。

あたしとまこは売店で買って来たパンを教室で食べる事にした。


まこ「休んでる間、何してたの?」

柚月「ボーっとしてた。」

まこ「後は?」

柚月「後?ボーっとしてた。」

まこ「そして?」

柚月「ボーっとしてた。」

まこ「何なのこの会話(笑)」


これが当たり前の日常。

下らない話で笑って、ちょっとした噂話で盛り上がって・・・。

自分で視野を狭くして、心をシャットダウンして。典型的な「悲劇のヒロイン」打ってしまっていた。

ほんの少し視点を変えれば見えてくる事も、閉ざしてしまうと何もかもがネガティブ思考になってしまう。

きっと、今までのあたしは何をするにも臆病で、傷付く事を恐れては逃げて。

要は「負け犬」だった。

そんなあたしを前向きにさせてくれた人・・・。


まこ「譲さん・・・。」

柚月「えっ!?」

まこ「忘れちゃったの?花火大会で光希君が連れて来た友達。」

柚月「あ、あぁ・・・。覚えてるよ。譲さんがどうかしたの?」

まこ「また四人で遊びたいなぁと思って。」


そうだった。

まこは譲さんの事・・・、闘病中だという事を光希さんから何も知らされていない。

譲さんなりの、まこへの優しい心遣いを絶対に無駄にしてはいけない。

まこには決して悟られてはいけないんだ・・・。


柚月「こ、光希さんとはどうなの?」

まこ「うん、光希君が用事あったりで会える頻度は減ったけど、連絡は変わらず毎日取ってるよ!」

柚月「そっか。相変わらずラブラブなんだね。」

まこ「でも、用事って何だろう?あんまり深く聞いたら嫌がられるかなって思って聞けないでいるんだけど・・・。」

柚月「だ、大学生だし、いろいろあるんじゃない?光希さんはまこ一筋だから大丈夫!!」

まこ「そっか・・・、そうだよね!!」


苦し紛れに話題をすり抜けながら、久しぶりの学校生活を満喫していた。

・・・していたはずだった。

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