第37話 あの子
まこ「柚月、おはよう!」
柚月「あ、まこ。おはよう。」
まこ「今日も一人?」
柚月「うん。」
新学期が始まった今日。あたしは、毎朝の日課であった廉を迎えに行く事を辞めた。
あの日から、ずっと避けられている日々。そして、花火大会での光景・・・。
あたしの心が完全にすり減ってしまう前に、現実逃避をしたいというSOSを出していた。
柚月「光希さんとは上手くいってるの?」
まこ「うん!バイトも終わって頻繁には会えなくなったけど、連絡は毎日取ってるよ。」
柚月「そっか、良かったね!安心したよ。」
まこ「本当にありがとうね、柚月。」
柚月「ううん。さて、教室に行こう?」
教室の中に入れば、またあの日々が始まる。
何とも言えない不安に煽られながら、下駄箱から教室へ向かおうとした時、まこが突然声をあげた。
まこ「柚月!!」
柚月「どうしたの?」
まこ「あれ・・・。」
まこが指をさす方向の先。
そこには、教室に向かう為の階段の手すりにもたれかかっている廉の姿があった。
そして、その隣には確かに見覚えのあるあの顔・・・。
花火大会で廉の横に座っていた女の子がいた。
まこ「何?どういう事?」
柚月「あの子、分かる・・・。」
まこ「え?」
柚月「あの女の子、実は花火大会で廉と数人で来てた中の一人なんだよね。多分なんだけど・・・。」
まこ「散々柚月の事振り回しておいて、何イチャついてんの!?あたし、
ちょっと廉君の所行ってくる!!」
柚月「ダメ!まこ、お願い。いいから辞めて?」
まこ「だってっ・・・!!」
柚月「あたしと廉は付き合ってる訳でも無いし、今では話すらしてないんだから。自由なんだよ、廉は。何をしても。」
そう、自分に言い聞かせるしかなかった。そもそも、それが正常な判断だった。
「柚月の毎日に俺は似合わない。」
あの時、そう告げてあたしの前から姿を消した廉。
廉は自分に似合う人を見つけてしまっただけ・・・。
とても悲しい事だけど、廉にとっては良かった事。
ただ、それだけの事・・・。
まこ「このままでいいの?」
柚月「いいの。」
まこ「あたしは納得出来ない。ねぇ柚月。柚月はいつまで自分の気持ちを・・・」
柚月「教室、行こう?」
まこの言葉を遮り、あたしは階段へと向かう。
一歩・・・、また一歩と廉との距離が縮まって行く。
「大丈夫。」
そう自分を励ましながら、あたしは廉とその女の子がいる横を通り過ぎ、階段を駆け上がろうとした時・・・。
廉 「だから、何回言われても付き合えないって。」
気怠そうに言う廉の声が耳に入って来た。
そして、わざとなのだろうか?その女の子はあたしに聞こえる位の声で廉にこう言った。
『今の子でしょ?廉君の好きな人。』
柚月(やめて、聞きたくないっ・・・。)
まこ「ねぇ。あんたさぁ、廉君にそれ聞いたところで、何か解決すんの?」
後方で、まこが女の子に対して食らいつく台詞を放ったのが聞こえた。
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