第35話 またね。
譲 「楽しかった!!」
光希「結局最期まで残っちゃったね。二人とも、大丈夫?」
帰り道。
大通りから少し外れ、あたし達は人混みを避けながら花火大会の残り香を感じつつ、ゆっくりと帰路へと向かっていた。
柚月「あたしもまこも、この道は慣れてるので大丈夫です。ね、まこ?」
まこ「うん、大丈夫。」
光希「柚月ちゃん。」
柚月「はい?」
光希「ちょっといいかな?」
光希さんに呼び止められたあたしは、一緒に並んでいたまこから離れ、咄嗟に気を利かせてくれたのだろう・・・。譲さんはさりげなくまこに近付き、何気ない会話をし始めた。
光希「柚月ちゃん、今日は本当にありがとう。」
柚月「いえいえ、こちらこそ。今日はありがとうございました。」
光希「うん、今日の事もだけど・・・、譲の事。」
柚月「譲さんですか?」
光希「俺の勝手な憶測でしかないけど、あいつ、自分の事柚月ちゃんには話せたんじゃないかなって。」
柚月「それは違います。きっとあたしが聞き出すような形を譲さんに取らせてしまったんだと思います。」
光希「例えそうだったとしても、ありがとう。譲を笑顔にしてくれて。」
「楽しい思い出だけを残してやりたい。」
「後悔のない日々を送らせてやりたい。」
「生きて良かったと最期に思わせたい。」
親友を越え、恋人を越え、家族をも越えて・・・。
これだけ相手を想える人が、世の中にどれだけいるのだろうか?
そして。きっと桂太先生達も同じ様に、誰りも深い「絆」を持っていたのだとあたしは確信した。
柚月「あたし、譲さんに大切なことを沢山教わりました。」
光希「そっか。」
柚月「譲さんに負けてられないなって、元気を貰いました。」
光希「うん。」
柚月「譲さんは、あたしの先生です。・・・人生においての。」
光希「譲には、最高の褒め言葉だね。喜ぶよ、絶対。」
「また、会いたいんです。」あたしの言葉に光希さんは「会えるよ、必ず。」
そう、笑顔で答えてくれた。
光希「それじゃぁ、今日はありがとう、楽しかったよ。気をつけてね。」
柚月「はい、ありがとうございます・・・あの、譲さん!!」
譲 「どうしたの?」
柚月「またね!!」
譲 「うん、ありがとう。」
「さよなら」は言いたく無かった。
「また会えたね。」そう言い合える事を期待しながら、光希さんと肩を並べて歩く譲さんの姿を、あたしはこの目にしっかりと焼き付けた。
柚月「さて、あたし達も帰ろうか!」
まこ「柚月。」
柚月「どうしたの?」
空は完全に夜の色に埋れていた。
「光希さんに告白したの」
突然、まこは泣きながらあたしに抱きついて来た。
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